賛否両論の『ドラゴンボールDAIMA』をレビュー! “異世界転生もの”として見ると分かりやすいかも? 「DAIMA」が今の時代に刺さる理由を考える
『ドラゴンボールDAIMA』をレビュー:階級社会の大魔界では理解されない「修業」という概念
面白いのは、悟空の言う「修業」という言葉の意味が、パンジを含めた第3魔界の魔人にイマイチ伝わっていないという点です。元々のポテンシャルはあったものの、悟空は落ちこぼれの下級戦士だったところから、必死に修業してエリートを超えた人物です。 つまり悟空は修業によって、ある意味階級移動を果たした人物と言えるわけですが、逆に生まれつき階級が決まってしまう大魔界のパンジたちには、努力して成長する「修業」の概念自体が良く分かっていないように見えます。 頑張ったところで第3魔界から第1魔界に行けるわけがないという前提に立っている、ある種の階級社会でパンジたちは生きているので「修業ってなに?」と、ポカンとしてしまうのかもしれません。 この点は完全な私の邪推ですが、修業で困難を乗り越えてきた悟空が現れたことで、何も変わらないと諦めていた大魔界の階級制が、各々の頑張りによって変わるかもしれないと、大魔界の住人たちが希望を見出して奮起し、社会変革を起こしていく物語になったら面白いなと期待してしまいます。
『ドラゴンボールDAIMA』をレビュー:時間にケチな現代人に刺さる、寿命を徴収する大魔界の税金システム
最後に触れておきたいのが、大魔界の憲兵隊が行っていた税を徴収するシーン。重税に苦しむ魔人の姿と共に、憲兵隊が放った「金貨が払えない怠け者には、1枚につき寿命3年をもらう」というセリフが印象的でした。 お金が払えないなら寿命を払えという、とんでもない要求ですが、フィクションの出来事とはいえ「寿命=時間」を奪われることの恐怖感はかなりリアルなんじゃないかと思ってしまいました。SF映画の『TIME/タイム』を思い出したという人もいるかもしれません。 昨今はタイパ(タイムパフォーマンス)なんて言葉も登場し、仕事だけでなくプライベートでもタイパ思考で過ごしている人は少なくないでしょう。時間を節約するため、友達から勧められた映画を倍速で視聴する、まとめ動画で見たことにするというのは日常茶飯事に行われているのではないでしょうか。 少しでも時間があればスマホゲームをやり、少しでも時間があればスキマバイトや副業をやり、興味の無いものは素早く消費するなど、とにかく時間に追われているのが現代人の特徴です。 サブスクリプションの普及でコンテンツの供給量が膨大に増えたというのもあるかもしれませんが、いずれにしてもタイパ思考で時間にケチになっている人や、時間をゆったり使ってのんびり過ごすのは苦手という人は一定数居るはずです。 そんな時間にケチな現代人にとって、寿命や時間を奪われるというのは圧政そのものですし、かなりの苦痛を伴うでしょう。単なる暴力やお金の徴収ではなく、時間に着目した点は時代性をとらえるという意味でドンピシャだなという印象を受けました。
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