賛否両論の『ドラゴンボールDAIMA』をレビュー! “異世界転生もの”として見ると分かりやすいかも? 「DAIMA」が今の時代に刺さる理由を考える
『ドラゴンボールDAIMA』をレビュー:大魔界の設定から見える「階級問題」と「貧困の影」
今作の見どころの1つは、悟空たちが冒険する「大魔界」の独特な世界観です。ひと口に大魔界と言っても、第1魔界、第2魔界、第3魔界とエリアが分かれています。しかも大魔界からの使者グロリオや途中で仲間になるパンジの話を聞く限りでは、エリアごとにどうやら格差があるような印象も受けます。 第3魔界出身のパンジが第2魔界や第1魔界に嫉妬や憧れを持っていることに加え、王宮のある第1魔界と、圧政に苦しむ貧しい庶民や盗賊で構成される治安の悪い第3魔界の暮らしぶりはかなり異なる様子で、一種の階級制があるように見えました。 しかもパンジの話を参考にすると、種族によって生まれつきどこの魔界で生活するかは、決まっているようですし、おそらく第3魔界の魔人が第1魔界に移り住むということは不可能に近いのだと思われます。努力に関係なく、生まれで運命が決まっているという、階級移動の困難さを感じる部分ですが、この点も現代に流れている感覚とつながるところがありそうです。 というのも昨今こうした階級問題を背景にした、持たざる者の怒りや苦しみを扱った作品は人気が高く、2019年公開の映画『ジョーカー』はその代表例です。主人公アーサーがエリートサラリーマンからいじめられるシーンは、社会の上と下が可視化されたツラい場面で、印象的だったと思います。 また2020年公開の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』や2018年公開の『万引き家族』をはじめ、韓国発の縦読みカラー漫画「WEBTOON」で大ヒットした『俺だけレベルアップな件』、親の借金を肩代わりさせられた主人公・デンジの鬱屈や怒りを描いたTVアニメ『チェンソーマン』など……2020年前後から社会からこぼれ落ちた人々の鬱屈や、エリート及び社会への反逆を表現する作品が多数登場しています。 韓国映画は特にはっきり表現されますが、貧困の苦しみと努力ではどうにもならない階級移動の困難さについては、世界的にある程度共有されている感覚なのかもしれません。日本でも若者の貧困や、高学歴の親の子供が高学歴になるなどの格差の固定化が意識され始めており、コロナ禍で明らかになったエッセンシャルワーカーとホワイトカラーの格差も含め、簡単には超えられない壁(階級)を感じている人も少なくないでしょう。 こうした2020年前後の時代状況と人気のコンテンツの対応関係を考えると、大魔界に存在する階級制度のような社会システムや貧困層の生きづらさ、治安の悪化などは、フィクションでありながらも視聴者の現実感とつながる要素と言えるかもしれません。
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