「トイレの扉をカーテンに」「浴室には浴槽台を」自宅で最期を迎える、家族に迷惑をかけない《最強リフォーム術》
転倒対策と並ぶ最重要ポイント
多くの人が勘違いしがちだが、転倒防止のために滑りにくい床材にリフォームする必要はない。本人が加齢で転倒しやすい身体になっている以上、床を変えても意味がないし、コストもかかる。 だったら、手すり、もしくは滑りにくい靴下やスリッパを利用したほうがよっぽど経済的だ。 戸建て住宅で2階建ての場合は、1階ですべての生活を完結できるように自宅内引っ越しは行っておこう。とくに階段での転倒防止や、夜間のトイレのことも考えて寝室は1階にしたほうがいい。 田中氏が転倒対策と並んで、最重要ポイントだと語るのは、トイレの改修だ。 「自宅で歩行器、車椅子生活になれば、開き戸タイプのトイレはドアが邪魔になって、トイレに入りにくくなります。かといって、引き戸にしてしまうと、手すりなどを取り付ける廊下の有効幅を減らすことになってしまう。そこで扉を外してしまいカーテンなどを取り付けるのがいいでしょう。これにより十分なスペースが確保できるだけではなく、間に合わず粗相してしまうリスクも軽減できます。 外したドアは物置にしまっておいて、自分の死後に付け直してもらえば、家族の面倒もかかりません」
水場で死なないために
排泄だけは介助を受けずに、最期まで自分で済ませたいと思うもの。だからこそ、トイレを「物理的に近くする」ことも重要になってくる。 体が思うように動かず、トイレへ行くのが難しくなったなら、ポータブルトイレを寝室に設置するのも手だ。最新のものは使用後の処理が簡単で、見た目も普通の椅子に近いので、尊厳が傷つけられない。 「いきなりベッドの横に置く必要はありません。抵抗があるのなら、寝室にある押し入れや納戸にポータブルトイレを設置すればいいのです。改修費用はかかってしまいますが、押し入れをまるごとトイレに改修することもできます」 最後に浴室についても見ていこう。ここは足を滑らせたり、他の部屋との温度差でヒートショックを起こしたりなど事故のリスクが高いので、慎重に行いたい。 まずはドアの交換。古い家だと、開き戸が使われていることがあるが、力を入れないと開閉できないし、浴室内で転倒した場合に開けられない。折れ戸も同様の懸念があるため、車椅子でも開けやすく、スペースを確保しやすい引き戸に取り換えるのが望ましい。 「浴室の全面リフォームは費用がかかってしまいますが、それほどおカネをかけずとも、簡単な改修で安全な環境を整えることができます。たとえば、タイルの冷えを軽減し、転倒も防げるマットはぜひ活用したいところです」 最後に浴槽台を設置しておくと安心だ。浴槽内と洗い場の高低差を補い、浴槽をまたぐ際の転倒を防止できるし、浴槽内で椅子や踏み台として使え、浴槽内で体勢を安定させるためにも利用できる。