巨人が「昭和の大企業」だとしたら、大谷翔平は「シリコンバレーの起業家」 契約金総額1015億円はグローバル資本主義がたどり着いた極致か
読売ジャイアンツよりもファンが多い大谷
21世紀はインターネットやスマートフォンの普及によって人々の興味や娯楽が多様化し、国民全員が夢中になるようなマスコンテンツがなくなったと言われて久しい。 たとえば1960年代には「巨人、大鵬、卵焼き」という当時の流行語が表した通り、多くの日本人が夢中になる共通の話題があった。 インターネットもスマートフォンもなかったこの時代、みんなが同じテレビ番組を見て、ラジオ番組を聴き、新聞を読んでいたからだ。そのようなメディア環境を背景に、王貞治と長嶋茂雄の「ОNコンビ」を擁する読売ジャイアンツは国民的人気を誇った。 が、今や地上波でのプロ野球中継は激減し、ジャイアンツはせいぜい「東京のローカル球団」に成り下がった。 テレビをはじめとするマスメディアで露出する機会が減った日本のプロ野球が「マイナースポーツ化」、あるいは「一部のオタク向けコンテンツ」と化していった一方で、プロ野球に代わる新しいマスコンテンツとなったのがMLBで活躍する日本人選手たちだ。 野茂英雄、イチロー、松井秀喜、松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、そして大谷……彼らが出場する試合は日本時間で深夜だろうと早朝だろうと生中継され、その活躍に多くの日本人が釘付けになった。 世界各国でスポーツファンの市場調査などを手がけるニールセン・スポーツが2023年12月に発表したレポートによると、日本では今や「エンゼルスファン」の数が「読売ジャイアンツファン」の数を上回っている。 ここでの「エンゼルスファン」とはもちろん「大谷が所属するチームのファン」という意味なので、2024年からは「ドジャースファン」が激増することになる。 今やひとりの日本人選手が所属するMLBのチームが、かつて国民的人気を誇った読売ジャイアンツの人気をしのいでいるのだ。 ジャイアンツがセ・リーグとパ・リーグのどちらに所属しているかも知らない女子高生が、エンゼルスやドジャースがロサンゼルスのチームであることは知っているだろう。