偏差値40から60まで“乱高下”した中学受験の結末
「この問題、すごく難しい学校の問題らしいんだけど、私解けちゃった!」 「塾の先生がね、よくできたって褒めてくれるんだ」 「塾の勉強って、学校の勉強と違ってすっごく楽しいんだよ」 そんな娘の姿に背中を押され、母親は正式入会の書類にサインをした。首都圏を中心にいくつも校舎があるこの塾は、自習室もあり、学校の宿題も見てくれるということで、共働き家庭の人気も高い。3年生の2学期の塾代は月に1万円にも満たないため、これで子どもの安全な居場所になるだけでなく、学校の勉強も見てもらえるのならば、悪い話ではないと思う家庭は多い。
■「御三家クラス認定証」 こうして始まった新学期、両親は、このまま学習習慣さえ定着してくれればいい、その程度の気持ちだった。だがある日、こころちゃんは「御三家クラス認定証」なるものを手に塾から帰ってきた。 「なんか私、すごく勉強ができるみたいで、先生が中学受験に向いているって!」 親のほうは、これが塾の営業トークだということをきっと心のどこかではわかっていた。しかし、子どもはすでにその気になっている。
入塾を迷う両親に、塾はたたみかけてくる。 「こころちゃんはポテンシャルが高いです。中学受験コースで頑張れば、良い学校に入学できると思いますよ」 こうした声かけは実はよくあるものだが、初めての子育てである両親が知る由はない。 “挑戦させてあげたい” 小学3年生2月、こうして、こころちゃんの中学受験勉強はスタートした。 ■中学受験コースでの「成績の乱高下」 中学受験コースへの変更後すぐの成績はあまり良いものとは言えなかった。しかし、事前に担当から「中学受験コースの問題は一般クラスと比べると難しいので、最初はみんな成績が下がります」と聞かされていたため、本人も母親もさほど気にはしなかった。
だが5年生クラスになると、こころちゃんのやる気に陰りが見え始める。中学受験コースの勉強は想像より難しく、きちんと理解ができる単元もある一方、まったくわからないというものも出てきていた。特に算数でその傾向が強かった。 その様子は模試の成績にも表れた。4教科の成績を見ると、好調時には偏差値60台半ばまで上がるのだが、悪いときには10ポイント以上も落ち込んでしまう。普段は細かく娘の勉強を見ない母親も、この成績の乱高下はさすがに気になった。