「挑戦させていただけるなら期待に応えられるように」 日本ハム1位・柴田獅子、憧れの大谷翔平と同じ二刀流目指す
日本ハムに1位指名された福岡大大濠の柴田獅子(れお)は表情を変えずに指名の瞬間を見つめていた。地元ソフトバンクと日本ハムの競合となり、日本ハムの新庄剛志監督が交渉権獲得のくじを引いたが、緊張した顔を崩さなかった。「緊張してしまって。カメラのライトがすごく明るかったんです」。チームメートに胴上げされてようやくリラックスした笑顔が浮かんだ。 ■ドラフト結果一覧はこちらから 同校からのドラフト1位指名はオリックスの山下舜平大以来4年ぶり。「1位指名は驚きもあったけど、光栄なこと。自分の中には期待に応えるという決意があります」と意気込んだ。柔らかいフォームと187センチの体格から投げ下ろす速球は最速149キロでスライダーの制球力も抜群。高校通算19本塁打の打撃にも定評がある。 柴田が本気でプロを目指したのは昨秋の福岡大会後。準決勝の東海大福岡戦が転機になった。救援登板した柴田は9回に同点とされタイブレークの末にサヨナラ負けを喫した。「こんなことじゃプロに行けない」。冬のトレーニングでは体の軸を作ることを課題にゴムを下半身につけて投球動作を繰り返し、メディシンボールを使ったトレーニングなども行った。トレーニングの成果で2年秋までの最速138キロから春の球速が146キロに伸び、さらに夏の大会で自己最速の149キロをマーク。約1年間で球速は10キロ伸びた。 打撃でも春から使用される低反発バットでも打てるようにと、本や動画でバッティング理論を勉強した。「一番理にかなっているのはメジャーリーグの打者」とメジャーリーグを見てスイングを研究。少しアッパー気味にバットを出すように改良すると、低反発バットを使用した春以降に9本塁打を量産した。夏の大会では準々決勝以降4番を任され、1本塁打を記録。打率は5割を越え「夏の成績が自信になりました」とプロでの二刀流挑戦の夢を抱くようになった。 昨秋からの急成長は素質だけではない。「最後の1年はすべてを削って自分のためにやってきました」。オフに友達と遊びに行く時間もトレーニングにあて、栄養の勉強をしてお菓子や油を多く使った料理は食べないようにした。プロへ行くため10代の高校生としては厳しすぎるほどストイックに野球に打ち込んだ成果だ。 憧れの大谷と同じ日本ハムのユニホームを着て同じ夢を追う。「投手も打者もどちらも自信があります。もし挑戦させていただけるなら期待に応えられるように頑張ります」と二刀流への意気込みを語った。新庄監督も「バットの軌道が大谷と同じ」とその打撃センスを認めた。「もしできるのならば挑戦してほしい。投打ともプロでも二刀流でやれるだけの力は持っていると思います」と柴田を育ててきた八木啓伸監督は太鼓判を押す。 「獅子(れお)」の名前は西鉄ライオンズからずっとファンだという祖父が命名した。ライバルチームのマスコットと同じ名前だが「この名前は気に入っています」と言う。「プロでも基礎基本を大事にしたい」と言う「ファイターズのレオ」が大谷に続く二刀流として北の大地を沸かせる日を夢見て一歩ずつ前進していく。(前田泰子)
西日本新聞社