タモンズ、忘れたい時代が映画化「人生捨てるとこない」和田正人×駒木根隆介×タモンズ対談
つらさを笑いに変える大宮のリアル
──タモンズのおふたりは、映画を観て特にどのシーンが印象に残っていますか? 大波 僕らが最後の『M-1グランプリ』に落ちたシーン。楽屋ではみんな話そらすのに舞台上でめちゃくちゃイジってくる、あの感じがめっちゃ大宮セブンやなと思いましたね。大宮セブンのみんなも何度も落ちてきた人たちだから、しんどさを知ってる。だから裏では触れない。でも、表では笑いのためだけに存在してるから、笑いを取りにいく。あれで救われるのが大宮セブンなんですよ。つらい部分って普通はフタしがちですけど、そこを出してこそというあのシーンには大宮セブンを感じましたね。 安部 僕は、駒木根さんが家でカレーを食べてるシーン。スプーンをくわえながら給与明細を見るところ、「すごい! 俺、これやってそう!」と思ったんですよ。 大波 ただ、あのシーンで給与明細、3枚あったでしょう。3枚あったら、こうやって(※目を細め、重なっている紙の右下を少しずつめくるようにして)明細を「絞る」んですよ。吉本の明細って右下に額が書いてあるから。 全員 (笑)。 安部 あと、3枚あるときはそこそこ稼いでるときなんですよ。 大波 そう、けっこういい。 安部 リアルは1枚なんで。 大波 カレー食いながら明細見るなんて余裕あるなこいつ、って思いましたね。 和田 そういう話、撮影前に聞きたかったですよ! 駒木根 本当に! 和田 大波さんがもみあげ触りながらしゃべるとか、そういうファンの方だけがわかってくれるような仕草も入れたかったんだよなあ。
囲碁将棋を「入れる」多摩川のネタ合わせ
──タモンズさんはもちろんのこと、大宮セブンの面々それぞれ本人かと思うような瞬間がありましたし、大宮セブンライブのシーンは実際のライブのような空気感でした。 和田 撮影前の顔合わせのときに、それぞれのコンビ、トリオでネタ見せをやったんです。そのあとに「大宮セブンライブの練習をしましょう」となって、脚本の中村(元樹)さんから与えられたお題に対してゲーム的なことをやっていきました。当然、芸人さん役のための練習なので、正解とか勝つこととかが目的じゃなくて、わざと間違えたり、ボケたりとか。まだ役に入る前ですから、連携というよりは各々でやるんですけど、それでも思いのほかおもしろくて。 大波・安部 へー! 和田 監督が「役者ってすごいな」と言ってくれて。もうそのまま、この俺たちがライブでやることを大事にしましょうと。この作品はタモンズさんが主役ではありますけど、「大宮セブンの映画」なので、大宮セブンライブのシーンは集大成なわけですよ。台本はもちろんあるんですけど、いかにライブっぽく見せるかを大事にしようと。だからあのシーン、一発撮りなんです。お客さんも実際入れて、噛んでも止めずにアドリブも放り込んでみんなで作り上げました。 駒木根 それぞれのコンビ、トリオは顔合わせまでにかなりしっかりネタをやっていて。囲碁将棋さんを演じたふたり(東虎之丞、柾賢志)なんて、多摩川の土手でずっとふたりで漫才の稽古を。しかも、絶対使われない『THE SECOND』でやったネタまで練習していたんですから。 大波 多摩川でやると、やっぱり囲碁将棋(※ともに神奈川出身)が身体に入るんですね。 和田 多摩川で大声で練習しすぎたせいか、ネタ見せのときに「芝居がでかい」と一番ダメ出し食らってました(笑)。 駒木根 みんなが自主的なモチベーションの高さで臨むのはすごく幸福な現場だなと思いました。大宮セブンは続いていきますけど、映画の中の大宮セブンはもう撮影が終わったら二度と集まらないので、撮影が終わるときはすごく切ない気持ちになりました。 和田 今年の『M-1グランプリ』の日は、みんなで集まって観戦会しようって話してます。 安部 めちゃくちゃ芸人やないですか!