【気象予報士対談】天達武史さん&井田寛子さんが語る異常気象の現実「地球が沸騰化している」「気象の常識が完全に変わった」
暑すぎて運動量が減る子供たち
──子供たちと温暖化やSDGsなどについて話しますか? 井田「いまの子供たちは、小学校から気象について学んでいるので、温暖化にも詳しいんですよ」 天達「ぼくが子供の頃は、冷蔵庫を開けて、頭を入れて『ひゃ~涼しい』なんてやっていたのに(笑い)。いまの子供たちは、何も言わなくても『水を出しっぱなしにしない』『ゴミを減らす』『無駄遣いをしない』などを当たり前にやっていて、偉いなと思います」 井田「うちの子が生まれてきたときは、すでにめちゃくちゃ暑かったわけで、それ以外の夏を知りません。プールが大好きなのに暑すぎたり、雷注意報で一季に2回くらいしか入れない。公園の滑り台なんか熱くて座れないし、遊具に誰もいない。だから運動量が少ないんです。その影響がこの先どう出るか、気がかりですね」
CO2排出を抑え、CO2を吸収する森を増やす。やるべきことはシンプル
──日本は、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする、いわゆる『2050年カーボンニュートラル』を目指していますが、その効果はあると考えますか? 天達「あと約25年ですが、本当に達成できれば、日本は脱炭素社会になります。出したCO2をそのまま吸える環境に戻していけば、気温が上がっていくのが抑えられ、徐々に落ち着いていくと気候科学者は予測しています。 そうなるには、いま行動しないとこの先何をやっても難しい状況になりかねません。私たちの課題は、CO2排出を抑え、CO2を吸収する森を増やすこと。やるべきことは実にシンプルです」 井田「人間はこれまでもさまざまな技術革新を行ってきましたが、今後はCO2排出を抑えたり、暑い時代を生き抜くための新しい技術を生み出すことが必要です。そのためには、再生可能エネルギーを活用することも重要です。 たとえば太陽光パネルにしても、耕作放棄地で小さなシェアリングみたいなものを日本全国で行えば100%太陽光で賄える、など調べると方法はいくつもあることに気がつき、疑問も芽生えます」 ──気象予報士が気候変動を伝える強みってありますか? 井田「気象予報士には毎日放送枠があり、視聴者と近い存在で、発言の自由度もあります。食や健康リスク、スポーツなどあらゆる分野と気候変動の話題は何かしら関係があるので、身近に感じてもらいやすいと思います」 天達「詳しい科学データが公表されるようになったので、以前より気候変動について話しやすくなりましたね。将来の予報を自ら行うより、たとえば現実に起こっている洪水の報道映像などを使い、どう具体的にイメージしてもらうかが、ぼくらの腕の見せどころ。テレビは映像の宝庫ですから」 () 【プロフィール】 天達武史/気象防災キャスター。1975年、神奈川県出身。ファミリーレストラン勤務時に気象予報士の資格を取得。その後、日本気象協会に所属し、フジテレビ系『とくダネ!』を経て、現在は同『めざまし8』に気象防災キャスターとして出演中。 井田寛子/気象キャスター。1978年、埼玉県出身。NPO法人気象キャスターネットワーク理事長。NHK静岡局を経て、気象予報士の資格を取得し、NHK『ニュースウオッチ9』やTBS系『あさチャン!』などで気象キャスターを務める。 取材・文/北武司 ※女性セブン2024年9月26日・10月23日号