悔やんでいます…年金月13万円・84歳母に「老人ホーム」を勧めた、年収950万円・56歳サラリーマンの懺悔【FPの助言】
老老介護や介護離職といった事態を避けるため、老人ホームの利用者が増加する昨今。一方、その陰では安易な選択を「後悔」する人も増えているといいます。実際に介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、具体的な事例をもとに、高齢者施設選びの注意点を解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
高齢の母との同居を望むが…妻が猛反対
年収950万円のAさん(56歳)は、都内のある上場企業に勤務する会社員です。自宅は千葉県にある一軒家で、35歳の昇進時に「千葉にある妻の実家にいつでも行けるように」という理由で購入したものです。 一方、Aさんの実家は栃木県にあり、現在は84歳の母親(Bさん)が1人で暮らしています。父親を病気で早くに亡くし、女手ひとつで息子を育ててくれた母。大学進学時も奨学金は利用せず、学費は全額母が出してくれました。Aさんはそんな母親のことを心から尊敬しています。 Aさんはある日、妻に次のように相談してみました。 「母さんも高齢になってきて、家のことを1人でするのが大変になってきたみたいなんだ。迷惑はかけないと思うから、俺たちのところで一緒に住んでもらうのはどうかな?」 「迷惑はかけないって、なにを根拠にそんなことが言えるの? あなたは仕事で日中家にいないでしょうけど介護もゆくゆく必要になるだろうし、そうなれば私はつきっきりでお世話することになるのよ。お義母さんだって、慣れ親しんだ実家を離れるのはかなりのストレスだと思うわ。どうしてもと言うなら、あなたが1人で実家に戻って母親の面倒を見たら?」 予想外にも、妻には冷たくあしらわれてしまいました。 Aさんが思いついた“理想”の選択肢 そんなある日のことです。Aさんは新聞広告で、自宅の近くに老人ホームが建てられたことを知りました。 「なんていいタイミングなんだ! これは運命に違いない」 想像を膨らますうちにすっかりその気になったAさんは、早速パンフレットを請求後、下見へ行きました。すると、Aさんの予想以上に施設は綺麗で、スタッフの対応も丁寧です。 Aさんは帰宅後、満を持して妻へプレゼンをしました。 「実はな、すぐそこにできた老人ホームに見学に行ってきたんだ。やっぱり、栃木の実家に母さんを1人にしておくのは心配で……。老人ホームならスタッフがいるし、食事の準備や掃除もしてもらえてお前にも迷惑はかけない。いいかな?」 妻は、夫が母に相談しないまま見学に行っていることに不安があるようでしたが、最終的にはAさんの熱意に気圧され、「あなたがそこまで熱心に勧めるなら」とAさんの母を老人ホームに入居させることを許可。 Aさんは同じ調子で母本人も説得し、Bさんはその老人ホームへ入居することになりました。望みが叶い、Aさんは大満足です。