【初夏の箱根旅行】すべてが極上。強羅に誕生したスモールラグジュアリーの宿
ディナーはプリフィックススタイルの日本料理を堪能する。コースのプロローグとなる向付けは、ホタルイカを添えた卯の花和えや桜エビとひじきの笹巻き寿司、蕗の薹のカステラなど、季節の恵みに彩られた滋味溢れる品々が目を楽しませる。14品のメニューから3品を自由に組み合わせられる進め肴も、ひとりひとりの体調や気分を尊重した、ほかにはない趣向といえる。この日は定番の一品である「地鶏のタルタルの香薫春巻き 黄身辛子」「平貝と山菜の山椒和え 酒盗クリーム 旨酢ジュレ」「箱根山麓豚の香味焼き ベリーソース ワインソース」という3品をオーダー。食材の香りと食感を存分に味わった。
満たしたお腹が落ち着いた頃、湯殿へと足を運ぶ。客室風呂と大浴場とで異なる泉質を引いていると聞き、夜は室内の湯に浸り、朝は大浴場で四肢を伸ばす。建物全体が3棟から構成され客室は外廊下と中庭で繋がるため、部屋を一歩出るだけで深い森の気配に包まれる。湯冷めしないようにと用意された丹前や綿入りの羽織にもセンスが宿り、“目に見えないラグジュアリーの本質”が感じられた。全室をスイートルームに仕立てた一流の設えはもちろんのこと、それらを省いたとしても「これぞ日本のおもてなし」と思える細やかな引き算の心尽くしが「ふふ 箱根」には満ちていた。 「ふふ 箱根」 住所:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-807 電話:0570-0117-22 BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。