父が年金を「60歳」から受け取るそうです。「持ち家で貯金が2000万円ある」とのことですが、大丈夫でしょうか?「年金が少なくなる」と聞いたので心配です…
老齢年金は65歳から受け取るのが一般的ですが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に受け取ることもできます。ただし、早くから受け取るほど受給額が少なくなるため、自分の両親が繰上げ受給をすると聞くと不安に感じる人もいるかもしれません。 過去に老後2000万円問題が話題となりましたが、実際のところ2000万円の貯蓄と持ち家があれば、本当に安心できるのでしょうか? ▼定年退職時に、「1000万円」以上の貯蓄がある割合は日本でどれくらい? 結論としては、かなり厳しい状況といわざるを得ません。その理由を、年金の繰上げ受給による影響と将来の貯蓄状況から解説します。
本来23万円の年金額なら、5万円以上減額される
まず、年金の減額について考えてみましょう。年金は最大で60歳まで受け取る時期を繰り上げて受給することができますが、その場合、「繰り上げた月数×0.4%(※)」減額されます。 ※ 1962年4月1日以前生まれの人の減額率は、0.5%(最大30%) 例えば、65歳から60歳まで繰り上げると、0.4%×12ヶ月×5年で24%減額されます。2024年度の夫婦2名の平均的な年金額(平均的な収入で40年間就業した場合の老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金との合算額)は、およそ23万円です。そのため、5年間繰上げ受給するとおよそ17万5000円まで減額となります。 年金の繰上げ受給は、原則として老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金を同時に繰り上げることになります。また、減額率は一度受給を開始すると一生変わらないので十分検討してから決めるようにしてください。
持ち家と貯蓄2000万円を取り崩しても厳しい状況
次に、「持ち家と貯蓄2000万円があれば大丈夫か?」ということですが、結論としては、このまま働かずに年金生活をするつもりであれば、かなり厳しい状況になる可能性が高いといえます。 総務省統計局が公表している2023年の家計調査年報では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は図表1に示されるとおり28万円2497円(消費支出、非消費支出の合算額)です。 毎月約28万円の支出に対して、年金額が17万5000円だとすると、毎月10万5000円(年間126万円)の赤字になります。貯蓄が2000万円あっても、この収支では15年ほどで貯蓄が底を尽きる計算になります。 図表1