「歳をとると筋肉痛は2日後に出る」はウソ? 筋肉痛を和らげる秘策を専門家に聞いてみた
運動不足を感じて体を動かしてみたものの、筋肉痛がひどいと継続のモチベーションも下がってしまう。少しでも筋肉痛を和らげる方法はないのだろうか? ▶︎すべての写真を見る
理学療法士であり、自ら北海道でジムを経営しているパーソナルトレーナーの小川哲広さんに30~40代がすぐに実践できる、筋肉痛緩和の秘訣を教えていただいた。
「歳をとると筋肉痛が2日後に出る」は本当か?
ーーまず、私たちが何となく信じている「歳をとると2日後に筋肉痛が出る」現象は、科学的に証明されているのか真相をお聞かせください。 年齢を重ねると筋肉痛が遅発するのかに関しては、科学的に「全く分かっていない」というのが正直なところです。 パーソナルトレーナーとして多くの方を見ており、現象として存在していることは確かですが、メカニズムに関してはまだ不明なんです。決してデマとは言い切れません。 ーー歳をとると筋肉痛と間違えやすい痛みもあると思います。対策が遅れる前に、痛みをどうやって見分けたら良いでしょうか? 安静時でも痛みが出る場合は、筋肉痛ではない可能性大です。寝ても座っても、力を抜いても痛ければ、別の要因かもしれません。 また脈打つような痛みや刺されるような痛み、感覚が鈍くなるような違和感などは自己判断せず、すぐ病院へ行ってください。こうした痛みは「ケミカル」な外的要素によるものもあるので、検査が必要です。 ーー筋肉痛のメカニズムについて教えていただけますか? 筋肉痛は原因によって、いくつかの種類に分けられます。1つ目は筋肉の微細な損傷です。2つ目は、力が抜けない状態が続くこと。さらに筋膜や腱、脂肪などの結合組織が損傷しても筋肉痛として感じられます。
筋肉痛のリカバリーポイント① 糖分をしっかり摂取する
ーー30~40代男性が頑張って運動して、筋肉痛が出た場合はどのような対処法がありますか? 1つは「エネルギー」の摂取です。つまり、食べ物によって筋肉痛はかなり軽減されます。ご飯などの炭水化物は、筋肉や肝臓に「グリコーゲン」というエネルギーの形で貯蔵されます。 グリコーゲンが枯渇すると、筋肉痛の原因である筋損傷の回復が遅れるため、糖質をしっかり取り入れることがリカバリーにおいては重要だということです。 また、糖質は「低GI食品」と「高GI食品」の2種類に分けられます。「GI」とは血糖値を急激に上げるか、ゆっくり上げるかの違いです。運動後には「高GI食品」を摂取した方が、グリコーゲンの回復が早いと研究によって分かっています。 つまり、おにぎりやじゃがいも、パンなどを補給すると筋肉痛を緩和できるということです。 ーーどのくらい摂取したら良いのでしょうか? 厚生省基準では、アスリートは体重1kgあたり8~12g摂ると良いといわれています。つまり、80kgの体重の人だと約800gということです。これはおにぎり22個分に相当します。 ーーそんな食べられません(笑)。 一般の人だと1日330~430gなので、約半分で大丈夫です。おにぎり10個分程度ですが、3食に分けて食べることになりますし、ほかにも糖質は摂取しますから、無理する必要はありません。 ただ、30~40代の方が習慣的に運動しているなら、糖質の摂取を心がけてくださいということはお伝えしたいです。また飲み物は、水だけでなくスポーツドリンクをおすすめします。 しかし、運動中は糖質を摂りすぎると、反射や反応が遅れるといわれているので注意が必要です。運動後に一気に取り入れるよりも、15分ごとに糖質を摂取するほうが回復には良いです。 ーー糖質以外にも取り入れたほうがよいものがありますか? 糖質に加え、タンパク質を一緒に取り入れると「インスリン」と呼ばれるホルモンが出ます。インスリンは、筋肉の回復に重要です。最近の研究で分かっているのは糖分とタンパク質に加えて、「ロイシン」と呼ばれるアミノ酸も一緒に摂取すると、リカバリーが早まるということです。 ロイシンは、ドラッグストアで「BCAA」と表記されている製品のことです。