「民主主義」が問われた一年 2015年の日本政治を振り返る
今年9月の集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法の成立は、戦後日本の安全保障政策の大転換と評されました。同じ9月には安倍晋三首相の自民党総裁への三選が無投票で決まりました。師走に入ってからは、普天間基地の辺野古移設をめぐって、政府と沖縄県が訴訟合戦を繰り広げています。この一連のニュースの通底には、ある一つのキーワードがあるようです。政治学者の内山融・東京大学教授に2015年の日本政治を振り返ってもらいました。 【写真】国際NGO職員が国会前デモに参加して感じた「違和感」とは
世論を二分した安保関連法成立
2015年の日本政治においてもっとも関心を集めたテーマは、9月に成立した安全保障法制であろう。この問題をきっかけとして、「民主主義とは何か」があらためて問われることになった一年だったといえよう。 2015年9月19日未明、参議院本会議で安全保障関連法案が可決・成立した。他国軍への後方支援の拡大や、国連平和維持活動(PKO)の任務拡大など多岐にわたる内容であったが、もっとも議論を呼んだのは、集団的自衛権の行使を可能とする点であった。 自国が直接攻撃を受けていなくても同盟国などが攻撃された場合に行使される集団的自衛権は、これまで、日本国憲法により行使が禁じられているとされていた。しかし安倍政権は、国際環境の変化によって、集団的自衛権なしでは日本の安全は守れなくなったとして、2014年7月に集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定した。 これを受けて今回の法制化が進められたわけだが、集団的自衛権に対する世論の反発は強かった。2015年6月の衆議院憲法調査会で長谷部恭男早大教授ら3名の参考人すべてが安保法制は違憲であると発言したこともあり、安保法制への反対論は強まっていった。実際、各社で行われた世論調査の結果の多くは、回答者の過半数が安保法制に反対していることを示していた。参院での可決直前にも、数万人といわれるデモが国会を取り巻いていた。 こうした事態を受け、世論の反対にもかかわらず安保法制が強行されたことは民主主義をないがしろにするものだ、との批判が、言論人や各種団体などから湧き起こった。民主主義に関する多くの論考や書籍が発表されるなど、活発な議論がなされるようになった。