「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま
■ベトナム人スタッフの「優秀さ」に脱帽 だが、この成功の最大の功労者は、なんといっても現地のスタッフだったと小高氏は感じているという。急ピッチで準備を進めたため、当初はサービス面に多少の不備はあったものの、「優秀なスタッフたちが順次、改善してくれたおかげで、食事も接客も格段にレベルアップした。いまではベトナム人スタッフの半数以上が5つ星レベルのサービスを身につけ、誇りを持って、仕事に取り組んでくれている」のだそうだ。
実際、ダナン三日月のスタッフたちが笑顔を絶やさず、テキパキと働いている様子を見ていると「多くのベトナム人がサービス業に向いている」ことがよくわかります。 小高さん自身、そのことを痛感しており、「日本やベトナムでホテル三日月流の人材教育を実践してきたが、多くのベトナム人スタッフは一昔前の日本人のように良い意味でお節介で、気配りができる。そのマインドはサービス業の根幹となるものなので、人材教育も想像以上にスムーズに進んだ」と言います。(115ページより)
コロナ禍の収束以降、ダナン三日月の勢いはさらに伸びたそうだ。2022年6月からの1年間だけでも、宿泊と日帰りの合計で49万人もの来場者を受け入れたというのである。この数字はダナン市に進出している5つ星ホテルのなかでも屈指のもので、2期目については年間66万5000人に達しているという。 ベトナムという国が持つポテンシャルと、それを下支えする勤勉な国民性、そして中小企業ならではの強みを活かした日本型経営が、見事に噛み合ったケースだといえるのではないだろうか。
印南 敦史 :作家、書評家