「ホテル三日月」経営危機からベトナムで復活の訳 日本企業が続々躍進「加速経済ベトナム」のいま
「2017年3月にホーチミン市に社員旅行に出かけた際に、当時87歳だった祖父(小高芳男さん)が『ここで商売をしよう』と言いはじめたのが端緒となった」と現代表の小高芳宗さんは話します。(101ページより) ダナン市の人口は約125万人(2023年)だが、半径300km圏内の人口は1150万人に達し、流入観光客数の年間目標(コロナ禍前)は800万人。そんな同市の観光地としてのポテンシャルに着目した創業者の直感に基づき、ホテル三日月グループは日本のホテル三日月と同じ「親子3世代」をメインターゲットに据えたビジネスを展開することにしたのである。
なお、この一大プロジェクトにおいてもっとも重視されたのは意思決定の速さだったようだ。 通常、海外進出といえば準備期間も含めると5年はかかってしまいそうなものですが、小高さんは「意思決定のはやさこそ中小企業の最大の強み」と「実印を首にぶら下げて、いつでも契約を結べる」ことを示しながら自ら全力で交渉に臨んだのです。 そのため、ダナン湾の近くにリゾートホテル(12棟48室のヴィラ)と約1万8000坪の土地を所有していた提携先(M&Aの対象)と出会ってからの動きは実にスピーディで、交渉も急ピッチで進められていきました。(103ページより)
■創業者の逝去を乗り越えてM&Aを断行 ところが、その直後に前代表が逝去したためプロジェクトは頓挫するかと思われたが、前述した現代表の小高芳宗氏は祖父の意思を貫徹。前代表が亡くなってわずか2日後にM&A費用の25億円をホーチミン市に送金した。そこには、「非居住者口座に現金を持ったまま交渉することで、創業者が他界しても、自分たちが本気であることを伝えたかった」という決意があったようだ。 決意は伝わり、創業者の逝去から約2年の歳月を経て、ホテル三日月グループは2019年4月に同社の株式を100%取得し、現地法人の社名をODK MIKAZUKI VIETNAMに改称。M&Aのクロージング条件としていたダナン市所有の隣接地の取得も同時に進め、2019年1月に土地オークションで落札した。日本人や日系企業が土地オークションに参加するケースは稀有で、ベトナムにおいては日本人初、日系企業初の実績になったという。