「一体感のある現場は、奇跡が起こります」佐野広実×江口洋介×蒔田彩珠『誰かがこの町で』ドラマ化記念鼎談
富裕層が暮らし、秩序が保たれた高級住宅街を舞台にした、佐野広実さんによるミステリー小説『誰かがこの町で』。住民同士の忖度と同調圧力が暴走した結果、起こった悲劇を描いています。この作品を読んだ人の多くが「これは私の話かもしれない」と思わせるリアリティが魅力で、版を重ね続けてきました。 【写真】シックなジャケット姿の江口洋介がカッコよすぎる… 映像化を望む声に応え、2024年12月8日午後10時よりWOWOWにてドラマが放送・配信されています。そこで、原作者・佐野広実さん、主演・江口洋介さん、蒔田彩珠さんの対談を特別開催。たっぷり語り合っていただきました。 江口さん演じる真崎雄一は、過去に仕事も家族も失い、現在は法律事務所で調査員として働いています。そんな真崎の元に、蒔田さん演じる望月麻希が「自分が生まれた直後に失踪した両親の行方を調べてほしい」と依頼するところから物語は動き始めます。両親の行方を追い、19年前の一家失踪事件の真相について調べるうちに、二人は「相棒」のような関係になっていきます。 取材・文/前川亜紀
「すでに8回も観てしまいました」
――佐野広実作品は「ページをめくったら一気読み」とも言われるほどの圧倒的な吸引力が魅力。佐野さんは、多くの作品を出版していますが、映像化は『誰かがこの町で』が初めてとお聞きします。 佐野広実さん(以下・佐野):ドラマ化は本当に楽しみにしていて、DVDが手元に来たらすぐに全4話分を観ました。俳優さんたちの演技に引き込まれ、すでに8回も観てしまいました。 江口洋介さん(以下・江口): 8回も!? ありがとうございます。役者冥利に尽きます。 佐野:ドラマ化では、全てを製作陣にお任せしていました。想像以上に魅力的な作品になり、感謝でいっぱいです。江口さんが演じる真崎雄一も、蒔田さんが演じる望月麻希も複雑で重い過去を背負った人物です。演技にあたり、大変だったのではないでしょうか。 江口:お手本がいないキャラクターですから、やりがいがありました。彼(真崎)は娘が自死し、妻も去り、仕事まで失っているという、途方もない絶望を生きている。想像もつかない背景を持つ人54歳の男を深掘りすると、圧倒的な孤独がありました。おそらく、人と目を合わせるのも辛い世界を生きているのだと解釈し、動きと感情を抑えました。僕は、意識していないと、気持ちが外に出てしまうので。 蒔田彩珠さん(以下・蒔田):江口さんと私は、直前に『忍びの家 House of Ninjas』(2024年Netflix)で共演し、明るい親子の役だったんですよね。あの作品とは全く別の役柄を演じるので楽しみにしていました。