<地域の足としての自動運転バス>運営を阻む3つのハードル、”背伸び”でなく現実解を
JR塩尻駅前に停車していた車両に乗り込んだスタッフが運転席にあるボタンを押すと、そのバスはゆっくりと自動運転で走り始めた。加速もスムーズで、直線区間ではあっという間に最高時速35キロに到達した。 【写真】3次元地図には、車両のカメラやセンサーが取得した信号や障害物などの情報が、リアルタイムで次々と反映されていく 正面に見えた赤信号でバスはすっと停止。青信号で再発進すると、ハンドルがクルクル回り、ゆっくりと左折した。 「間もなく、次のバス停に停車します」 車内の自動アナウンスが流れた後、バスは対向車線の車の状況を見ながら今度は右折して道路を横断、塩尻市役所の停車場に入る。途中、歩行者を感知すると、衝突しないよう小刻みに停車しながら、安全に停車した。 乗車時間は3~5分程度。その間、車内から障害物などは見えなかったが、道路上で何かの物体を感知したのか、一度だけブレーキがグッとかかり、身体が前のめりになるタイミングがあった。ただ、それ以外、全く違和感はない。 一般のバスと同様、シートベルトも不要である。当然ながら、運転席にいたスタッフは、自動運転中、ハンドル操作もせず、アクセル・ブレーキペダルに触れることは一度もなかった──。 日本最長の宿場町である奈良井宿を擁する交通の要衝、長野県塩尻市では今、最新鋭の技術を駆使した「自動運転バス」が公道を走っている。 車両はマイクロバスサイズの「Minibus」で、定員は16人。自動運転のシステム開発を手掛けるスタートアップのティアフォー(名古屋市)が製造した電気自動車(EV)バスで、車体のあちこちにカメラやセンサーが付いているが、見た目は通常のバスと変わらない。車内には3次元地図に様々な情報が表示されたモニターが運転席と後部座席に2カ所設置されていた。 同市での実証を支援するティアフォーの竹内慎吾氏によれば「走行条件を厳しくするほど安全性は高まるが、停止しやすくなり、乗り心地にも影響を与える。このバランスを確保することが重要だ」と話す。