「発達障害ではなく〝発達特性〟という言葉で少しでも前向きに」自身も発達特性のある息子、重度自閉症の姉をもつ小児科医・西村佑美先生が初の著書に込めた思い
専門家としてだけではなく、ママ友として共に
「ママ友ドクター」としての活動を始めたのは4年前、ちょうど産休とコロナ禍が重なったときでした。医師としての経験は貴重なものですが、白衣を着て診察室にいると、発言は制限されてしまいますし、どうしても薄い壁ができてしまう。そうではなく、私は1人の女性として、母親として、目の前で困っているお母さんたちに寄り添いたい。そこで、白衣を脱いで、ママ友まではいかなくても、発達特性についての専門的な知識や情報も提供し、みなさんに寄り添って一緒に頑張っていきたいと思ったのが活動のきっかけです。 コロナ禍だったのでオンラインで少人数から少しずつ接していったのですが、特に未就学のお子さんのお母さん方に、心の持ちようや日々のコツをアドバイスすることで、子どもたちは私が想像しているよりもずっと伸びることが分かりました。これは発達特性に限ったことではありませんが、子どもの力を実感しています。 ■発達特性を誇りに思える社会へ 安心して頼っていいママ友代表みたいな形でいられたらと思ってここまできましたが、卒業された方も含めて「子ども発達相談アカデミーVARY」という名の全国30都道府県、海外6ヵ国に140人以上のコミュニティができるほどになりました。 今は、その皆さんが、先輩ママとして他のママを支えられるような仕組み作りをしたいと思い、出版を本をきっかけに「日本小児発達子育て支援協会」を立ち上げました。この活動を単なるコミュニティに留めるのはもったいないので、できれば一つの「社会資源」として作り上げていきたいと考えています。 今、目の前にいる発達特性のある子どもたちが大人になったとき、「親に心配かけたけど、特性があってよかった」と言える社会にできるよう、一緒に頑張ってくれる方をいつでもお待ちしております。
■著書はこちら 『最新の医学・心理学・発達支援にもとづいた子育て法 発達特性に悩んだらはじめに読む本』 西村佑美著/定価1760円(税込)/Gakken 1万組以上の親子を診た豊富な臨床経験と、自らも発達特性のある子を育てた実体験に基づく医師&母親目線のアドバイスが詰まっています。発達障害の不安や手のかかる子育ての悩みを抱える親御さんに寄り添い、子どもの成長や日々の関わり方について何度でも頼れる、西村佑美医師による初の著書。 ■お話を伺ったのは 西村佑美|小児科医 発達専門小児科医/一般社団法人 日本小児発達子育て支援協会 代表理事。日本大学医学部卒。小児科専門医。子どものこころ専門医。日本大学医学部附属板橋病院小児科研究医員。発達特性を持つ長男を含む3児の母。最重度自閉症のきょうだい児として育ち、障害児家族に寄り添える仕事がしたいと医師を志す。第一子出産後、発達特性を持つ親としての経験を活かし発達専門外来を開設。2020年より「ママ友ドクターR」プロジェクトを立ち上げ、SNSやアカデミーでママたちの支援を行う。2024年9月26日(木)に『最新の医学・心理学・発達支援にもとづいた子育て法 発達特性に悩んだらはじめに読む本』(Gakken)を発売。
取材・文・写真/黒澤真紀