ワーママへの''過剰な配慮''が、ママ社員の退職理由に⁉︎ マミートラック解消に向け企業が見直すべきこと
「中抜けOK」など、柔軟な制度でフルタイムに戻りやすく
── ワーママの機会損失を減らすためには上司とママ社員のギャップの解消が不可欠で、その一手として、短時間勤務社員への評価の見直しが必要なのかもしれません。一方、フルタイムに戻ることに不安を感じて退職していくケースも多く、時短勤務という制度そのものがいいものなのかわからなくもなります。 浜田 短時間勤務制度が悪なわけではなく、それを取らないといけない人のためにはなくてはならない制度だと思います。でも今って、基本的に週5全てを時短にしなくてはいけないという形じゃないですか。そこが企業の柔軟性のなさじゃないかと感じます。 稲田 16時に退社して20時からは家でパソコンを開いて仕事を再開するような、「中抜けOK」の形なら、総時間でフルタイムを確保できる人も多いですよね。 浜田 私たちは、コロナを経て、仕事は会社以外の場所でもできると気づいたんですよね。NTTグループも2020年からコアタイムなしのスーパーフレックスタイム制を導入しています。コロナ収束後もある程度リモートワークを定着させた企業では相当数の社員が時短勤務からフルタイムに戻っているんですよ。 ただ、注意したいのは、リモートが定着する中でも出社組とリモート多様組が生まれてくることです。管理職がずっと出社をしていれば、どうしても出社組ともコミュニケーション量が増え、評価にも影響してくる。リモートを使っている社員との「コミュニケーション格差」には注意する必要があります。そういう意味で、リモートを使う社員が「特別な人」にならないようにする環境づくりが必要だと思います。 一番大切なのは、管理職が柔軟な働き方を選んでいることです。部署の上司がそれをやっていると、部下も選びやすくなる。キーパーソンは上司なんです。
浜田 私は脱マミートラックのキーパーソンは夫という仮説を持っていました。家事育児の分担を夫と見直したら女性は仕事に充てられる時間が増えて、脱マミートラックにつながると思っていたのです。 しかし、マミートラックに関する21世紀職業財団の調査によると、夫よりも上司の影響力が大きい。上司から「時短でもあなたの能力に期待してこのプロジェクトを任せたい」のような働きかけがあったり、もしくは、ママ本人が「早く退社するけどまだ余裕があるので難しい仕事もやりたい」と上司に交渉したりすることで、脱出できたという報告内容だったんです。 稲田 上司に対して手を挙げるために、女性自身も自己肯定感を高めていく必要があると思うんです。マミートラックに悩んでいる女性は、「もう少しがんばりたいけど家庭に負担がかかったらどうしよう」と揺れ動いている方がほとんど。そういった心境の中で自分の背中を押してくれるのは、身近な成功体験です。 「こういうふうに周囲に協力してもらえば、仕事の幅を広げていくことができるんだ」という具体的なイメージが持てると、自信がつきます。そのために、自社だけではなく社外にもメンターを持つことが、当事者にとっては大切なことだと思います。弊社では社外の女性がどのように両立に取り組んでいるのかを知ることができるよう、企業を越えたワーママのキャリアコミュニティをつくっています。