<ボクシング>村田 辰吉も絶賛 思い出の地でKO勝ち
<プロボクシング・ミドル級10回戦 22日・京都島津アリーナ> 村田諒太(三迫) KO 6回2分35秒 ヘスス・アンヘル・ネリオ(メキシコ) 小さな右が当たるとロープを背負ったメキシカンは崩れ落ちた。「そこまでのダメージが溜まっていたんでしょう。序盤にボディを打っておいてよかったですよ」の推測。一度は、立ち上がったが、そこに狙い済ました右ストレート。再びダウンしたヘスス・アンヘル・ネリオは、苦しい顔で正座したまま、動けなかった。6ラウンド2分35秒、福地レフェリーは村田のKO勝利を宣告した。 「プレッシャーをかけることには成功したが、頭を下げてきてやりにくかった」。過去に世界ランカーとの試合経験のネリオは、百戦錬磨のずる賢さがあった。パンチを放つと頭を下げて、密着してクリンチ。身体を入れ替えながら、その下げた頭を村田の顎をめがけてぶつけようとしてきたり、時には、逆に後頭部を抑えて、村田のラビットパンチをアピールしてみたりと、なんでもありの“汚いボクシング”に徹した。アマチュアでは、あまり経験のできないプロの世界である。「本来なら、頭を下げたところにアッパー打たなければならなかったのですが……」。焦れた村田の心理に感づいたのは、帝拳の本田明彦会長だった。 「このままの流れでいいから。無理せずともいい」。4ラウンドのインターバルで、セコンドに近づくと村田にそう声をかけた。村田は、冷静さを取り戻したかのように右ストレートだけに頼らずパンチを上下に散らして、フィニッシュへとつなげたのである。本田会長は、「私はスタミナを見る意味で判定まで行ってもいいと思っていたから。いろんなことを試すために組んでいる試合。その意味で、今日は、ボディアッパーやボディストレートも打てたし、ジャブの指し合いもできた。冷静に対処できたと思う」と評価した。 確かにプロ4戦目の村田には、いくつかの成長の跡が見られた。まず構えに力みがなくなり、ボディアッパーとボディストレートというパンチの打ち分けが試合でできるようになった。右から左ボディという対角線コンビネーションも打った。これまでのジャブとワンツー、右ストレートを狙いすぎて空回りするというワンパターンから脱却をした。村田の特徴である激しいプレッシャーも健在。腹を打たれダメージを貯めたメキシカンに、もう逃げ場所はなかった。