<ボクシング>村田 辰吉も絶賛 思い出の地でKO勝ち
「練習でできることを試合でできるという強心臓を持っている。左のボディは、世界でも引けを取らないと思っている。こういうファイタースタイルが、本来の僕の姿」。村田はハイテンションだった。ひとつだけ気になったのは、ディフェンスと、攻撃の時間が、あまりにハッキリしすぎている部分。レベルの高い試合で“受けの時間”を作れば、そこからリズムを失い、ダメージにさえつながり致命傷になりかねない。 本田会長に、その疑問をぶつけた。「彼のガードは、世界で通用するレベル。腕力があるからできるんだろうけど、あれを破ることは簡単ではない。ミドルの試合は何があるか、わからないから慎重になってもいい。普通、あれだけガードを固めると、手数が減るものだが、彼は打てるからね。右のストレートから返しの左フックが試合で打てるようになれば完成形だが、練習ではできているし、もっとコンビネーションもやっている。まだまだ、これからの試合で出せるものは多い」。プロの見解を聞いて納得である。 試合前、元WBC世界バンタム級王者、辰吉丈一郎が、村田の控え室に激励に来た。村田が初めて生でプロボクシングを観戦したのが、今から15年前。辰吉丈一郎が、大阪ドームでWBC世界バンタム級王者、ウィラポンとのリターンマッチで劇的に散った、伝説の試合だった。カリスマに、その話をふると「村田君が中学時代? どれだけ俺は、おっさんやねん」と笑った。試合を見終えた辰吉に、再び村田の印象を聞く。 「右の破壊力は凄いんとちゃうかな。相手が、あれだけ雑にきたら、こういうボクシングになるのはしょうがないで。右につなげるための餌もちゃんと撒いていた。マイク・タイソンにしても、みんなフックを狙ってKOしたというイメージが強いかもしれんけど、そこまでに、いろんなパンチを打っている。その上でのフック。村田もそう。右の生かす前に、アッパーとボディを巧く使っていた。アマ臭さはない。巧いわ」 ーー珍しく褒めてばっかりやね? 「ミドルで日本初の金メダルを取って、日本人の株を上げた男。そんなボクサーに何の文句を付けられんの?」