一度きりの人生だもの、「卒婚」と「死後離婚」という道があってもいいじゃないか
様々なスタイルの「卒婚」
わかりやすい卒婚は、戸籍を抜かない状態で別居することだ。 しかし、親の介護や家業の手伝いなどで、どちらかが実家に戻る場合でなければ別居はオススメできない。おカネがかかるだけでなく、離婚問題に発展する可能性も高い。同居型の卒婚を選ぶのが吉だろう。 「法律上の夫婦である以上は生活を支え合う義務を負っているので、生活費などの取り決めを綿密に行っておくといいでしょう。『住居にかかる費用は夫』『経済的負担が少ない分、掃除は妻』『衣食にかかわる家事や経費は別々』といった決まりごとを作っておけばトラブルを避けつつ家庭内別居ができます」(宮本氏) 同じ空間にいることすら耐えられない人もいるだろう。そんな夫婦には「生活する時間を分ける」卒婚を考えてみてほしい。 宮本氏がこう続ける。 「私の知人夫婦は奥さんが早起きなので、朝5~6時くらいには起きて8時には家を出るそうです。一方、夜更かししがちな旦那さんは、奥さんが外出していなくなった時間に目覚め、お昼ごろには外出。その後、昼の3時ごろには奥さんが戻ってくる。それから夜7時に旦那さんが帰宅。8時からの夕食だけは二人で過ごして、あとは別々の部屋で寝るそうです。 もともと離婚を考えるほど関係が悪かった夫婦らしいのですが、お互いのためにも顔を合わせない生活をしたことで、いまは充実したセカンドライフを過ごしています」 互いに距離を取ることで、自分の自由な時間が増えるし、パートナーの魅力が再確認できるケースもあるという。新しい夫婦関係をつくり直す意味でも卒婚は大切な生前準備なのだ。
書類一枚で「赤の他人」
妻が熟年離婚を選択する大きな理由に挙げられるのが「義父母の介護疲れ」である。介護ではなくても、嫁姑の不仲が夫婦関係に影響を与えることは少なくない。そんな妻にとって最悪のケースは、夫に先立たれてしまい、ひとりで義父母の面倒を見ることだ。そんな事態を避ける手段が「死後離婚」だ。 これは、配偶者を亡くした人が配偶者の親や兄弟姉妹と縁を切ることをいう。その大半が、夫を亡くした女性が舅や姑らとの関係を断ち切るために行われ、逆のパターンはほぼない。 葬儀・お墓・終活コンサルタントの吉川美津子氏が解説する。 「いちばんのメリットとされているのは、夫を亡くした妻に、姑など義理の親族への『扶養義務』がなくなることです。通常、妻は夫を亡くしても、仮にその親族が生活に困窮すれば、民法の規定で彼らを助ける義務が生じることがあるのです。 しかも、夫の実家との姻族関係を終わらせたとしても、相続した遺産や遺族年金、生命保険は変わらずに受け取ることができます」 その手続きは驚くほど簡単だ。姻族関係終了届というA4の書類を一枚、役所に提出するだけだ。書類は役所で受け取るか、自治体によってはHPでダウンロードできる。 手続きするのは本籍地、もしくは居住地の市区町村役所。身分証明書さえあれば、ただちに成立してしまう。一度関係を切ってしまうと、その義父母と養子縁組を結ばない限り、親族には戻らない。