iPhoneのアプリストア外部解禁、情報漏えいの危険はないのか? 規制案を作った政府のキーマンが描く構想とは
米アップルがiPhone(アイフォーン)のアプリ市場「App Store(アップストア)」を2008年に始めて15年。今、その在り方が大きく揺れている。一つ一つのアプリの安全性や個人データの扱いを審査しているアップルはこれまで、自社のストア以外でアプリをダウンロードして流通させる「サイドローディング」を認めていない。しかし、一部のアプリ開発業者がその運営方法を「独占的」と批判し、訴訟などを起こしたことで、各国当局が調査や規制強化に乗り出している。 中国「アイフォーン禁止せず」 報道官、情報流出に警戒感も
日本では、内閣官房デジタル市場競争本部が、新法を来年の通常国会に向けて準備している。自社のアプリストアや決済システムの利用をアプリ開発業者に義務付けるのを禁止する規制が盛り込まれる見込みだ。 政府が規制案への意見を公募したところ、サイバーセキュリティーや教育、医療といった各分野の専門家や団体から500件超の意見が集まった。アップルの集計では9割近くが安全性の問題などを理由に反対したという。懸念を表明している関係者と、政府側のキーマンに話を聞いた。(共同通信=吉無田修、杉原領) ▽健康情報のセキュリティーに懸念 「サイドローディングはさまざまな多くの危険要素を内包している。信頼できる情報源としての全てのデータが活用不能になる、もしくは漏えいの原因となるものと危惧しており、提案のまま法制化することに賛成できない」 東京都の医師を会員とする東京都医師会(東京都千代田区)は意見公募で、アップストア以外の他社ストアからアプリを入手できる環境に変えることに対し、このように強い懸念を示した。
東京都医師会の尾崎治夫会長に理由を聞くと「せっかく安心できる仕組みをアップルが作っているのに、(政府は)いろいろなアプリストアを使えるようにして便利にしようという考えかもしれないが、セキュリティーを破壊してしまうのではないかと思った」と説明した。 東京都医師会は、都内の医療機関が電子カルテを利用して患者の診療情報を相互に参照する仕組み「東京総合医療ネットワーク」の整備を進め、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)に熱心に取り組んでいる。 アップルの腕時計端末「アップルウオッチ」は、代表的な不整脈の「心房細動」の兆候となる不規則な心拍を測る機能を備え、心電図のPDFファイルはiPhoneから取り出せる。東京都医師会はこのような端末を使ってユーザーの健康情報「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」が活用される場面が広がることを想定し、「スマートフォンは安全安心なものでなければいけない」(目々沢肇理事)と訴えている。