iPhoneのアプリストア外部解禁、情報漏えいの危険はないのか? 規制案を作った政府のキーマンが描く構想とは
▽中国のマルウエアで情報が盗まれる危険 知的財産や経済安全保障が専門の東京大学先端科学技術研究センターの玉井克哉教授は「サイドローディングが実現した場合、セキュリティーの弱いソフトウエアがiPhoneに入り込む可能性がある」と述べ、中国が国家規模で作っているとされるマルウエア(悪意のあるソフト)を例に挙げた。 玉井教授は、中国のスパイが企業の機密情報を盗もうとしているのが「経済安保の最前線」と指摘。「iPhoneの基本ソフト『iOS』も攻撃対象になっている可能性はあるが、現時点では防御できていると思われる。(規制によって)アプリレベルで変なモノが入ってくるリスクは避けなければいけない。新法では別の安全なアプリ流通経路を作るという考え方だが、アップルの審査と同レベルのセキュリティーを確保するのは難しいだろう」と語った。 日本の規制案は、欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)などと足並みをそろえた動きだ。しかし、玉井教授は、日本政府のこうした追随姿勢にも疑問を投げかけた。
「欧州が規制を導入したとしても(その影響が)どうなるのかまだ分からない。欧州が導入するルールが常に正しいとは限らない。(新規制で税収などは増えないので)日本政府にとって何にも良いことはないし、国民にも良いことはない。(企業に対して強権的な政策の進め方は)中国のまねをしているように見えるほどだ」 ▽「必要な範囲で規制しイノベーションとのバランスに考慮する」 専門家や業界団体から、こうした懸念や批判が上がる中、政府はなぜ、新法を制定してまでアプリの流通経路を広げようとするのだろうか。内閣官房デジタル市場競争本部の成田達治事務局次長はインタビューで、次のように説明した。 ―規制検討の背景は。 「ユーザーも事業者もスマートフォンを通じてデジタルサービスを使用している。アップルと米グーグルはデジタル空間で基本ソフト(OS)というインフラを押さえることで、エコシステム(経済圏)を形成し、多くのユーザーとビジネスを集められる。市場の競争機能によって寡占構造を変えるのは困難だ。両社が作った適切なルールは多く存在するが、競争の観点から見ると、自社サービスを有利にするルールや事業者への過度な制約が問題視されている。規制は必要な範囲で行われるべきであり、イノベーションとのバランスを適切に考慮する」 ―新法は「事前規制」という仕組みで禁止事項を示す。