ハイブリッド EV PHEV 4WD…… 欧米車が越えられないと言われ続けてきた日本車の「壁」
【番外コラム02】CVT&DCT
ガソリン、ディーゼルを問わず、内燃機関は効率のいい運転領域が狭い。パフォーマンスの面からは最大トルク付近から最高出力回転あたりを常に使いたいし、燃費の面からは熱効率に優れた領域(通称燃費の目玉)をキープするのが得策。そのためには優れたトランスミッションが必要になる。 で、狙ったゾーンを有効に使おうとすればするほど、ミッションへの要求は厳しくなる。変速レンジはよりワイドに、変速段数はより細かく、そして内部フリクションは限りなく小さく……。その結果として、最近のミッションはどんどん複雑でハイテク化してきているわけだ。 国産勢の多くが採用するCVTは、多段化という意味では理想的なミッションだ。エンジン回転数をまったく変えずに速度を変化させられるから、エンジン側の燃費ベストゾーンをピンポイントで利用することが可能。ステップ変速ミッションが8速になろうが9速になろうが、これだけはCVTにかなわない。また、弱点といわれていた変速レンジの狭さやフリクションロスの多さも、副変速機を組み合わせたりベルトやプーリーの改良で克服しつつある。 いっぽう、もともとMT比率が高かった欧州勢は高効率ATの開発では日本車に対して遅れをとっていたが、MT技術を進化させたDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が急速に普及しつつある。 DCTの考え方は理想論からスタートしたCVTとは対照的で、MTの欠点を克服して効率を向上させていったもの。多段化は現状7速どまりだが、フリクションロスの少なさやダイレクト感のあるドライバビリティが売り。これまでMTを作っていた工場のラインを利用できるという生産性のメリットも見逃せないポイント。 燃費やドライバビリティはあくまでエンジンとのコンビネーションの問題だから、CVTとDCTのどちらが優れているかはいちがいに評価できないが、クルマ好きにはどうもDCTのほうが評判がいい。 これは、ダイレクトなトルク伝達フィールや歯切れのいいステップ変速フィールがMTに近い感覚をもたらすためだと思うが、このあたりは理屈だけじゃ割り切れない不思議なところ。 今秋9月に登場予定のフィットハイブリッドには小型モーターを組み込んだDCT(ホンダの場合はi-DCD)が組み合わされる予定だけど、もし燃費性能がアクアと同等なら、ボク自身もたぶんDCTを選んじゃうと思うなぁ。(文:鈴木直也) ●初搭載は? CVTは1987年にスバルジャスティが初搭載。その後日産が精力的に開発をしたが、トヨタは出遅れた。いっぽうDCTは1980年代にポルシェがPDKというDCTを962に搭載。市販車では2003年にデビューしたゴルフR32に初搭載(日本には未導入)。 (写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)