この大学名、正しく読める…? 「難読大学」は、なぜ難しい名前なのか
日本にはさまざまな大学がありますが、「何と読めばいいかわからない」「読み方に迷う」という大学名はありませんか。中には、長年の思い込みで間違った読み方をしている大学名もあるかもしれません。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが解説します。 【写真】続く不合格に「浪人する…」 あきらめた息子を変えた母の行動
三育学院大、常葉大、尚絅大、叡啓大、美作大、名桜大。 これらの大学名をすべて読める人はかなりの大学通である。大学関係者、大学周辺に住む方以外には「難読大学」と言っていい。漢字の音読み、訓読みをどうつなげて読めばいいのか、一瞬、悩んでしまう。 「みついく」「じょうよう」「しょう○○?」「○○けい」「みさく」「なざくら」――すべて誤りである。正しくは次の通り。 三育学院大は「さんいくがくいん」と読む。徳育(豊かな心を育てる)、知育(知識と知恵を身につける)、体育(健やかな身体を育てる)の3つの教育をバランスよく授けることが由来だ。 常葉大は「とこは」で、メインキャンパスは静岡市にある。「橘が青々として、 いつも変らない常葉であるごとく、 学園もまた常に生々発展することを願って、 法人の名称を 『常葉学園』 と名づけたのであります」(大学ウェブサイト)。 尚絅大は「しょうけい」だ。メインキャンパスは熊本市にある。中国の古典『中庸』の一節である「衣錦尚絅」が由来だ。「錦を衣て絅を尚ふ(にしきをきてけいをくわう)」と読み、錦を着た場合、その上から薄物をかけ、きらびやかな模様を表に出さない、これを学問に転じ、自分の博学をひけらかし、虚栄心を満足させてはいけない、という意味だ。自分を磨き自己を完成させなければならない、という教訓も込められている。なお、宮城県名取市にある尚絅学院大も「しょうけい」と読む。尚絅大とのつながりはない。 叡啓大は「えいけい」と読む。2021年広島市に誕生した県立大学である。開学前、新大学設置準備室は名称についてこう説明した。 「『叡』の訓読みは『かしこい』。『谷』と『目』が組み合わされた字で、物事を掘り下げて追求し見据えるとの意味がある。そうした力をもって『啓』、つまり新時代を切り開く人材を育てる」(中国新聞デジタル2019年12月20日)。 SNS上では「読みにくい」「公立大学とわからない」という意見があがっていた。また、比叡山の「叡」の字が含まれるからか、「仏教系大学ですか」と問われることもあった。 公立大学には「公立」ならではのブランド力があり、受験生を魅了する。学費が安い、難易度が高い、地元からの信頼などだ。それゆえ、大学の正式名称には地名に加え県立(都立、府立)、市立、公立などが付くところがほとんどだ。 しかし、叡啓大には「広島」も「県立」も付かない。同大学は「先行きが不透明な社会経済情勢の中で、地域社会や世界に貢献する高い志を持ち、解のない課題に果敢にチャレンジし、粘り強く新しい時代を切り開いていく人材」の育成を掲げている。24年入試では募集人員100人、志願者193人、合格者125人、入学者97人だった。28人の入学辞退はやや気になるところだ。 美作大は「みまさか」であり、地域名だ。岡山県の北東部に美作市がある。北は鳥取県、東は兵庫県と接しており、 氷ノ山後山那岐山国定公園などがあり、風光明媚な台地が広がる。しかし、大学は美作市内ではなく、津山市内にキャンパスがある。1967年美作女子大として開学。2003年に共学化し、美作大と改称した。生活科学部食物学科、児童学科、社会福祉学科がある。24年5月1日現在、全学で在籍者数は835人、充足率96.6%となっている。地方大学としては健闘しているが、少子化で年々入学者数は減少しており、大学運営はこれから厳しくなりそうだ。 名桜大は「めいおう」と読み、沖縄県名護市にある公立大学だ。1994年の開学時は地元の12市町村と県の出資による公設民営大学だったが、2010年に公立大学に移行している。校名は、国内で最も早い1月に桜咲く名高い場所であることから付けられた。地域名や「公立」が付かないので、私立に間違われることがある。