NASAのCIO(最高情報責任者)が語る「宇宙ミッションとIT管理」
米航空宇宙局(NASA)は、米国有数の情報通信機関として膨大なデータを管理している。NASAは、太陽系外にあるボイジャー探査機からのデータや火星探査車が撮影した画像、国際宇宙ステーションや全米10カ所の施設からの通信や科学データなど、約113ペタバイトにもおよぶデータを処理し、管理している。 これらを統括するのが、NASAの最高情報責任者(CIO)であるジェフ・シートンだ。彼は10億ドル(約1550億円)の予算を管理し、700人の職員を率いている。 シートンは1991年にロボティクスエンジニアとしてNASAでのキャリアを開始し、2004年にバージニア州にあるラングレー研究センターの最高技術責任者(CTO)に就任。その後、同センターのCIOを務めた。そして、2021年にNASA全体のCIOに昇進して以来、同機関のデジタル基盤の近代化に注力している。 フォーブスは、シートンを全米から50人の優れたCIOを選出する年次リストである「CIOネクスト」の2024年版 に選出した。下記に、彼とのインタビューの要約を掲載する。 ■数十年前の宇宙船のセキュリティ 「NASAは、今もなお1977年に打ち上げられたボイジャー探査機の運用を 行なっている。この探査機は人類が作り出した中で最も地球から遠くにある物体になっている。これらの探査機のコンピュータをアップグレードする方法はないが、この探査機が及ぼす潜在的な脅威を緩和するために最善を尽くす必要がある。私たちのミッションに携わる人々は、常にその方法を考えている」 ■ミッションデータの保護 「私たちが直面する脅威の一部は、システムの脆弱性から発生している。そのため、私たちは多要素認証の導入や可能な限りの暗号化、システムのパッチ適用などを奨励している。私の役割の一部は、ミッションの成功に向けて、これら基本事項の重要性を強調し、それを運営の一部として組み込むことだ。データを収集する際には、そのデータが検証済みで信頼性があることを科学者や研究者に保証しようとしている。データとそれを生成するシステムの保護は、NASA全体にとっての最重要課題だ」