水俣病支援に”新世代”の光 旗に「怨」の文字掲げデモした時代から変わる支援のあり方、若者が共感抱くきっかけに
水俣病のイベントに若者の姿 大半は10~20代
今年設立50年を迎える支援団体、水俣病センター相思社。ここで今、少し変わったイベントが行われている。テーマはネコ。水俣病でネコと言えば「ネコ実験」だ。 チッソは、水俣病の原因が自社にあるかどうか調べるためにネコの餌に工場の排水を混ぜて与える実験を続けた。犠牲になったネコは6年間で838匹。これと同じ枚数を目標に全国からネコの写真を募集し壁一面に貼っている。 8月25日にはネコ実験に詳しい水俣病研究会の有馬澄雄さん(77)を招いてトークイベントも開かれた。会場には予想の倍の60人、それも10代から20代の若い世代が訪れ、靴脱ぎ場はスニーカーで埋まった。エアコンが効かなくなるほどの熱気だった。 「ネコは若い人に響くのかね」と驚き顔の有馬さんに質問が寄せられた。 「こんな残虐な実験が許されたのも時代的なものですか」 「そのあたりの問題意識は‥‥‥うーん、当時はあまりなかったんでしょうね」 これまで受けたことがない角度からの質問に、有馬さんが苦笑しながら答える。しかし参加者たちの関心は、ネコの受難を超えて水俣病全般に及んだ。
過去と今映す水俣病 若者の眼差し
最年少の参加者は福岡県の福岡大学大濠高校新聞部の生徒たちだった。数日前にネットで知り、急きょ取材をかねてやってきたという。3年生の2人は水俣病を調べた経験があったが、他の3人は初めて。生徒のひとりはチッソがネコ実験で得たデータを隠蔽していた点に興味を惹かれたという。 「事件の隠蔽というのは今もありますし、隠されていたことを知れば自分にもなにか出来ることがあるんじゃないかと思って」 もうひとりは、水俣病を拡大させた経済成長に触れた。 「日本の高度成長の時と同じように今、世界で公害や環境破壊が起きていると思います。水俣病を知ることでそうした国を支援することが出来るのではないかと」 そしてもうひとりは、いまだ未解決の事件に驚いていた。 「水俣病の患者の認定って思っていたより狭いなって。水俣病の全体像ってまだ把握出来ていないんだって思いました」 水俣病は教科書の中の出来事などと揶揄されるが、少なくとも今を映す教材として彼らは水俣病に向き合っていた。