会社への不満や離職対策に効く人事データの活用法 タムラ製作所の心理的安全性のつくり方
サーベイデータを活用したピンポイント研修
――人によって心理的安全性に対するギャップが生じている場合、どのようにフォローしているのでしょうか。 佐藤:全社員が心理的安全性に関心を向けるための働きかけを行っています。入社時には、当社の行動指針がどのように心理的安全性と関連付けられているのかを理解してもらうために、「心理的安全性研修」を実施。心理的安全性を考える機会として他社の実践者を招いた講演会を行ったり、「サンクスカード」の交換によって称賛文化の醸成につなげたりしています。 岸:チームの心理的安全性を高めるには、管理職だけではなくメンバーのフォロワーシップも重要だと考え、さまざまな取り組みを進めています。「心理的安全性浸透チーム」を半期ごとに立ち上げ、全社から20人程度のメンバーを募ってワークショップを開催。具体的なシナリオやケーススタディーを共有し、メンバーが心理的安全性を自分ごととして考える機会を提供しています。 また人事評価では、管理職だけではなくメンバーも「心理的安全性」の行動特性を評価する項目があります。心理的安全性を評価する行動の例には、「話を聞く際に相づちを打つ」といったフォロワーとして重要な行動などが含まれています。 浅井:360度評価や心理的安全性サーベイの結果、組織の形態を踏まえてピンポイントで研修を行う事もあります。最近では「世代間ギャップを超えたコミュニケーション」をテーマに研修を実施しました。研修ではカウンセラーを交え、1年弱かけて日々のマネジメントやメンバーとの接し方を振り返りました。加えて講義やグループワークを通してコミュニケーションのあり方を学びました。 ――研修の内容とその成果を教えてください。 浅井:研修ではチームごとに謎を解きながら宝探しをするプログラムを取り入れました。例えば周囲に声をかけたり、メモを共有したり、ホワイトボードを使ったりとさまざまなコミュニケーションの手法があります。事業部が異なり、日ごろ一緒に仕事をしないメンバーでチームを組み、コミュニケーションが必要な場を多く設け、その中で適切なコミュニケーションを探索する内容です。 社会的背景や価値観が異なるメンバー同士の世代間ギャップに悩む社員は多いと思います。しかし、研修後の効果を追跡した結果、半数以上の360度評価が向上し、チーム全体の心理的安全性も高まっていることがわかりました。カウンセリングやワークの効果だけでなく、共通の課題認識を持つ仲間の存在も大きいと思います。研修では毎回、振り返りや悩みの共有を目的に懇親会を行っていますが、部下や同僚には打ち明けにくい悩みも「ここでなら話せる」という人も多かったはずです。