東北小売業界、ドラッグストア軸に再編進むか
クスリのアオキホールディングスは東北で食品スーパー(SM)のフレッシュフードモリヤ、ディスカウントストア(DS)のマルホンカウボーイなど36店舗を運営する本間物産(山形県遊佐町)、千葉・東京でトップマートなど10店舗を展開する伏見屋(秋田県仙北市)のグループを譲受する。譲受日は25年2月28日。東北の小売業界は大手資本の進出、撤退の後、リージョナルチェーンが力を増し、またCGCのグループ内での提携など、遅々としながらも変化してきた。店舗展開が活発なドラッグストア(DgS)がさらに提携、再編を促すのか注目される。
クスリのアオキホールディングス、伏見屋グループなど中小スーパーを譲受
アオキはM&Aで事業拡大を図り、今回も伏見屋グループのほか、ハッピーテラダ(滋賀県大津市)、ヨシムラグループ(奈良市)の事業を譲受した。なお、アオキの25年5月期業績予想は、売上高4850億円、経常利益256億円。 アオキは伏見屋グループ、東北について「秋田県に初進出および東日本地区の店舗数が大幅に増加することになり、当社グループの東日本地区におけるドミナントを強化することで企業価値の向上に努める」とコメント。伏見屋は09年、仙台市内のスーパー・サンマリを、11年には経営破綻したモリヤをそれぞれグループ化し、有力商圏と位置付ける仙台市と周辺での店舗展開に弾みをつけていった。12年にはトップマートを傘下に収め首都圏も視野に入れていた。 モリヤ救済時に同グループの東海林誠社長は次のように話していた。「仙台圏を見てみると、大手の進出で地場が弱体化している状況にある。破綻するのはもったいない。モリヤに協力できるのは本間物産が更生会社だからだ」。経営が厳しい地元中小SMをM&Aで救済してきた企業であり、今回のアオキへの譲渡は中小資本での生き残りの難しさを表している。 東海林社長は、アオキへの譲渡について「経営改善に取り組み不採算店の閉鎖など行ってきた。しかし独自で2、3年は継続できるだろうが、将来の展望が開けない。DgSにテナントで入る方向性が示された。46店舗すべてと従業員の雇用確保ができたことで決めた」。 アオキの東北、新潟の店舗は新潟82、山形9、福島24、宮城12、岩手22。3社譲受により全店舗は1000店を超える。今後北陸からの日本海ルートと首都圏から北上するルートでの店舗展開が予想される。 DgSとDSの出店は人口減と高齢化で業績が厳しくなるSMにとって、より一層打撃を与えることになろう。22年1月にオープンした仙台市北部のアオキ錦ケ丘店は、同じ商圏内のみやぎ生協愛子店、ヨークベニマル仙台愛子店に少なからぬ影響を与えた。アオキに隣接し来春トライアルのオープンも予定されている。 みやぎ生協今野一彦店舗商品部長は「錦ケ丘店出店で客数は変わらなかったが、食品では畜産で供給が減少した。その後地場商品の『めぐみ野』を強化し戻してきた。アオキの生鮮は当面委託で変わらないだろうが、生鮮基地、工場を構えた段階で影響が出てこよう」とみている。さらに薬、日雑関係は影響があることを踏まえ、高齢化社会を見据えた店づくりをみやぎ生協は方針化している。調剤薬局の展開、薬の強化、ペットフード、介護用品など専門に特化した店づくりを急ぐ。 東北も大手DgSに加え食品に強い地元薬王堂、カワチ薬品などの出店でSMの領域が浸食されつつある。今度のアオキによる伏見屋グループの譲受が攻め合いに拍車がかかるのは必至。来春以降46店舗がどう生まれ変わるか注目される。
日本食糧新聞社