小学生に“算数の方程式”を教えない理由。 子どもに数学的な感覚を身につけさせるには?
子育てに直面したときに、巷で耳にする、あんなウワサ、こんな説。それってほんとうに根拠があるの? 「数学ができる」のは遺伝?子どもの才能や能力を伸ばすにはどうしたらいい? これまで、気になる論文を読んできた、情報理工学博士の山口先生が、世の中にあふれる「子育て説」を科学の面から一刀両断。現在子育てに悩んでいる方、なにかヒントが見つかるかもしれませんよ! 今回は、「小学生に方程式を教えること」についてお話しします。
小学生に方程式を教えるのは……
幼稚園生や小学生の子どもたちがやっている数量や算数の問題、ついつい大人のやり方で解きたくなります。その気持ちはとてもわかります。 海外の教育を経験した方からは、日本式の「小学生には方程式やマイナスを教えるべきではない」という通式を批判して、「小学生でも優秀なら方程式で解いたっていい」という意見も見かけます。 今日は、科学的根拠が全くないのですが、小学生に方程式を教えるべきか否かについて、私見的立場から考えてみたいと思います。 うちの子どもは小学校1年生です。 幼児期にあたるので、つい昨年ぐらいでしょうか、「数量」と呼ばれる、 「アメが2つあります。チョコレートが3つあります。お菓子はあわせていくつ?」 「4つのアメをお友達と分けるといくつずつ?」 といった10までの数字の遊びをやっていました。 10までの数字なので、特に複雑なことはないのですが、足し算や引き算、簡単な割り算ぐらいは「式」を使って解かせたくなります。 つい、「2+3=?」と考えたくなります。 幼児期の解き方は、指を使うのがよくやられる教え方だと思いますが、2の指をつくらせて、ひとつずつ3回増やしていって、5を算出することになります。 割り算などは、4つのおはじきなどを使って、ひとつずつ渡していって、平等に分けたりすると思います。
計算では数学的な感覚を身につけられない?
似たような話ですが、小学校高学年でやるような「つるかめ算」や比の問題は、連立方程式を使って解きたくなります。 小学生の一般的なやり方は、図の面積や2本の線の長さを使って、そのうえで計算することになると思います。 こんな図の書き方を覚えないといけないなんて…と思う方もいるようで、2つの変数を使って連立方程式を使えば、割と簡単に導出できるものでもあります。大人になるにつれ、もっと複雑な方程式を解いた経験もあるはずなので、小学生が習う程度の式は簡単なのに…と感じるでしょう。 すると、方程式を教える方が簡単と思ってしまう人もいるかもしれません。 私は両方とも反対です。 方程式を使って解く方法は、ただ単純にやり方を覚えてさえしまえば解くことができると、大人が思っているからです。 計算はやり方を単純化しやすくするものであり、本当に必要な数学的な感覚を身につけることができません。