小学生に“算数の方程式”を教えない理由。 子どもに数学的な感覚を身につけさせるには?
小学生の算数の思考を見倣ってみよう
たとえば「つるかめ算」を例にとりましょう。(鶴は足が2本、亀は4本ですね) 「全部で3匹いて、足が10本だったとき、それぞれは何匹でしょう」という問題とします。 方程式では「t+k = 3, 2xt+4xk=10」の式を解けばいいですね。(t=鶴、k=亀) この問題のなかで、数学的な概念の本質がどこにあるのかは(意見の分かれるところだとは思いますが)、私は鶴が多いか、亀が多いか、ぱっと見でわかるかどうかが大きいと思います。 方程式でやる方法では、そういうことは全く考えず、t=1, k=2と導き出せるため、鶴が1羽、亀が2匹とわかります。 一方、小学生の面積を使った考え方だと、ぱっと見で亀のほうが多そうなことがわかります。 なぜなら、足が鶴より多いし、鶴と亀両方を1匹ずつためしにあわせてみると6本、しかし3匹とも亀だと12本で多すぎるから減らさねば…とわかります。 方程式では、上記のような思考過程はしません。ただ作業をするだけです。 片方多すぎるとか、とりあえず3匹なんだから1匹ずつ足してみるとか、そういう考え方はしませんね。 小学生の考え方の方がずっと複雑で思考が深いということがわかります。こういう思考を繰り返させることが大事ではないかと私は思っています。 その年齢毎に身につけた方がいい項目があると思っています。大人からしたら、方程式が使えないなんてめんどくさいという印象があると思いますが、その分、今取り組んでいる項目への理解が深まるのではないでしょうか。 今後も、理系の研究者が母親になって感じた日々の疑問について、私なりに調べ、考えた結果を共有していけたらと思っています。
PROFILE
【山口利恵】 6歳の子どもを持つ母親で、博士(情報理工学)。普段は、東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授として、情報系の研究を推進。また、情報オリンピック日本委員会や国際大学対抗プログラミングコンテストのメンバーとして、中高・大学生の数理情報科学教育の振興にも邁進。趣味はクラシック音楽。