ロシアのウクライナ侵攻 近年の情勢伝える映画
ロシアは24日、ウクライナに対する軍事侵攻に踏み切った。俳優兼監督のショーン・ペンがウクライナ侵攻のドキュメンタリーを作るため現地に滞在していることが報じられている。ここにきて日本でもウクライナを少しでも理解したいと、配信サイトなどでウクライナに関連した映画を観る人も出ている。
歴史的事件の背景を知る映画の役割
2015年製作の『ウィンター・オン・ファイヤー: ウクライナ、自由への闘い』(エフゲニー・アフィネフスキー監督)は、2013年11月21日夜にウクライナの首都キエフの独立広場から始まり「ユーロ・マイダン革命」(ウクライナがロシアとEUのどちらを選択するかが争われた2004年のオレンジ革命に続く革命とされる)につながる市民と政府との約3ヵ月間におよぶ戦いを市民側から記録した作品。イギリス、ウクライナ、アメリカの合作で第88回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた。現在はネットフリックスで視聴できる。 当初はEUとの連合協定を締結する方向性を示していたにも関わらず、最終的にはかねてよりロシアから迫られていたロシア主導のユーラシア経済連合との結びつきを選んだ親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権に対し、反政府派の市民たちが「恥知らず」「退陣しろ」「ウクライナはヨーロッパの一部だ」などと激しい抗議活動を展開。政府側は治安部隊として特殊部隊ベルクト(内務省管轄の民警に属し2014年まで存在)まで動員したが、市民を鉄の棒で殴ったりゴム弾や実弾を発砲するなど暴力的な鎮圧にエスカレート、市民側もバットや銃器、火炎瓶などで抵抗するなど多数の死傷者を出す大規模な騒乱に発展した。 この映画はヤヌコーヴィチ大統領の失脚までが扱われているが、その後、ロシアによるクリミア半島併合や親ロシア派武装勢力によるドンバス地方の戦い、そしてウクライナ東部紛争へとつながっていった。 今回のウクライナ侵攻によりウクライナという国について初めて知った人は多い。映画も「どちら側から描かれているのか」といった判断をするリテラシーが必要ではあるが、こうした深刻な事態が起きたときにその背景を知るために役立つ一つの手段と言えるだろう。 (文・志和浩司)