“日本一美しい廃線跡”、旧国鉄倉吉線廃線跡の魅力とその知られざる歴史
■ 柵の向こうに見える蒜山の美しい山並み 内部は鋼製の“蓋”の効果で温度が比較的高く保たれ、照明がないので懐中電灯を頼りにコンクリートの空間を歩く。短いトンネルだが、廃線後約40年間クローズされた“闇”の迫力があった。 山守トンネルを出ると、「あっ!」と言葉を失った。線路がすぐ先でなくなっているのだ。 小鴨川を渡る橋梁と高架線路が撤去され、対岸の工場があるあたりに廃線跡らしき築堤が見えた。そこにもレールが一部だけ残っている。天候に恵まれれば蒜山の山々が遠望できるポイントで、現在は立入制限エリアだが、運行当時は素敵な車窓が望めたことだろう。 倉吉線は、いまはなくなった鉄橋で小鴨川を渡ると右にカーブし、ほどなく終点の山守駅に着くのだが、草に覆われていて駅らしき跡は見られない。 しかし路線図に掲載された写真で、一面一線の小さなホームがポツンとあったのを見ると、1日わずか6往復(1980年時点)の短編成の列車が静かに停車するさまと、それが今は夢の跡のような一面の草むらに郷愁を感じた。 もし、その先に線路が延びて、近くにそびえる鳥取・岡山県境の山々の絶景車窓を楽しめる列車が走っていたら、と一瞬考えた。だが、駅の跡の周辺に民家はほとんど見られなかったことから、人口減少下の沿線地域に負担の重いインフラの遺産を残さなかった答えを自ずと理解できた。
■ 初心者でも比較的歩きやすい “日本一美しい廃線跡”と呼ばれる旧国鉄倉吉線廃線跡。普段、歩けるのは山守トンネル手前までで所要時間は往復1時間程度だ。ウォーキングシューズなどの歩きやすい靴なら初心者でも歩ける。廃線跡観光案内所前の駐車場から片道1kmちょっとの距離なので気軽に訪れやすいのが魅力だろう。 筆者が取材時に宿泊した三朝温泉や、近々新施設のオープンする関金温泉のほか、打吹に残る白壁の美しい街並みなど、のんびり観光するのに好適なロケーションだ。ただし、今後訪問者が増えると、ごみ捨てや無断駐車などの問題が予想される。地元関係者も対策を意識しているという。 倉吉線の廃線跡“ならでは”のフォトジェニックな魅力で最近では全国ネットのテレビ番組でも紹介され、人気は続くことだろう。 【注意】冬期(12~2月頃)は泰久寺駅跡付近の廃線跡観光案内所が冬季閉鎖となり、駐車場も閉鎖される可能性があります。詳しくは倉吉観光MICE協会にご確認ください。また、線路付近の田畑や私有地、立入禁止区域には入らないよう注意してください。 【参考情報】 ◆旧国鉄倉吉線廃線跡(一般社団法人倉吉観光MICE協会・倉吉観光情報より)
花田 欣也