“日本一美しい廃線跡”、旧国鉄倉吉線廃線跡の魅力とその知られざる歴史
■ 廃線跡には桜並木のサイクリングロードも 廃線散策にもってこいなのが、一般社団法人・倉吉観光MICE協会の営業マネージャー・塩川修氏が監修した「旧国鉄倉吉線跡路線図」だ。学生時代からの鉄道ファンでもある塩川氏の倉吉線への思いがこもった路線図上には、ナンバーの振られた写真が豊富に掲載されてわかりやすい。 倉吉線の廃線跡で線路が残るのは終点の山守駅の手前、関金駅と泰久寺(たいきゅうじ)駅の中間点から山守トンネル手前までの約3km(および山守駅近くの一部)のみ。倉吉駅からしばらくの間は散策路や車道となっており、廃線跡を感じさせるロケーションは少ない。 しかし、途中の打吹駅のあった場所には倉吉線鉄道記念館(年中無休)があり、当時の貴重な写真の数々や貨物入替用に活躍した小型ディーゼル機関車も展示されている。打吹は倉吉のまちの中心にあたり、見事な白壁土蔵群も残り、名湯・三朝温泉へも近い。 倉吉線は小鴨川を渡ると、のどかな風景となり、西倉吉駅から上小鴨駅の2駅間の廃線跡は現在、桜並木に沿った3.9kmのサイクリングロードとして整備されている。天候に恵まれれば大山を望める気持ちのいいエリアだ。 また、西倉吉駅跡には当時のレールとホームがモニュメントとして一部保存されている。車だと平坦に感じるが、倉吉線は徐々に中国山地に向けて勾配を上り、途中1000分の25(1kmで25m上る)の急勾配が2か所あったという。
■ 鄙びた昭和のローカル線の面影が 関金温泉の最寄り駅だった関金駅付近から、倉吉線は山間部に入る。直線の線路は一面一線(線路1本に対し、片側ホーム1本のみ)の無人駅・泰久寺駅に至るが、その途中から当時のレールが残存している。 こんな倉吉線の廃線跡をたどるには、まず、線路から近い旧国鉄倉吉線廃線跡観光案内所(金~日曜日および祝日開館、12~2月は閉館)に立ち寄りたい。 筆者の取材には倉吉市観光ガイドも務める金光敏博氏にご案内いただいたが、鉄道ファンである金光氏らが収集した倉吉線運行当時のサボ(列車の側面に掲げられたホーロー製の運行区間標示板)や駅の標示などの貴重な品やミニジオラマがあり、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる。案内所近くには駐車場もあり、散策の拠点に便利だ。 泰久寺駅のホームは、可愛いミニサイズだ。運行当時は列車1両しか乗降できず、他の車両ではドアが開かなかった。 ホームの礎石も当時のままで、コンクリートの端には開通時期を記した刻印も残り、鄙びた昭和のローカル線の面影をよく残している。