「めまい、耳鳴り、難聴」の3点セットが現れるメニエール病の最新情報【40代から増える「耳鳴り・難聴」に要注意! ⑩】
「メニエール病」はめまい、耳鳴り、難聴という耳の不調による3大症状がセットでくるつらい疾患だ。この連載の監修者である耳鼻咽喉科医で医学博士の石井正則さんが、メニエール病に関する新発見・新開発をした。その新しい理論とそれに基づく最新の検査方法について伺った。
10年以上の研究でたどり着いた「シモヤケ理論」
ある日突然、回転性のめまいが起こるメニエール病。30代~50代の、特に女性に多い病気のため、なかには更年期の症状と勘違いして我慢してしまうケースもあるようだ。しかし、まったく違う病気なので注意が必要だ。 「典型的な症状は、まず片耳が詰まったような感じになる耳閉感(じへいかん)がして、耳鳴りや低音部の難聴が起こり、続いて周囲の景色がグオングオンと回るような激しい回転性のめまいに襲われます。少しでも頭を動かそうものなら、ひどい吐き気がして、実際に嘔吐してしまうこともあります。なかには下痢の症状を伴うことも。 めまいを起こす病気には、ほかに良性発作性頭位(とうい)めまい症などがあります。良性発作性頭位めまい症の症状は、数秒から数十秒くらいの短時間のめまいですが、メニエール病の場合はめまい、耳鳴り、難聴が3点セットで起こるのが大きな特徴です。さらにめまいの発作が長く続き、数十分~6時間くらい。なかには12時間以上続くこともあります。 これは、内耳のリンパ液が過剰に増える内リンパ水腫(内耳のむくみ)によって、内耳の機能が阻害されることが原因です。なぜむくむのかははっきりわかっていませんが、過度なストレスが引き金になると考えられています。 実際にメニエール病の患者さんには、真面目で几帳面、責任感が強いといった人が多く、過労、不安、睡眠不足、気圧の変化などが重なり、ストレス過多から自律神経のバランスがくずれることが大きく関係するといわれています。 謎の部分が多いメニエール病ですが、私はこの発症のメカニズムを10年以上にわたって独自に研究してきました。 実は、メニエール病のめまい発作が起こる前に、片側の肩や首のこり、頭が重くなったり、片耳に耳閉感や耳鳴りがするなど、かすかな前兆があることがあります。そうした患者さんに協力していただき、その状態のときの自律神経の検査をさせてもらいました。 すると、予兆が出ている耳の側だけ、交感神経が異常に興奮状態にあることがわかったのです。その後、10年以上の歳月をかけて、合計9人の患者さんを調べた結果、全員に同様な所見を認めました。私はこれをシモヤケ理論と名づけました。 指先などにできるしもやけは、寒さの刺激により、指の交感神経が異常に興奮し、指先の血管が極端に収縮します。すると血管内の成分が組織にあふれ出てくるのです。その中にむくみを起こすアルブミンや痛がゆさを引き起こす成分が含まれているため、指先が赤く腫れて、痛がゆくなるのです。 内耳の血管の構造は指先にとても似ているため、メニエール病のめまい発作もこれと同じ状況で起きる可能性を考えたのです。検査の結果、内耳にはカリウムイオンが多い場所があるため、交感神経の異常な興奮状態により極端な血管収縮が起きると、組織内にカリウムイオンが急激に増加します。それが、難聴や眼振(眼球が動く)、むくみの引き金を引くのです。 私はその過程をシモヤケ理論として提唱しました。このシモヤケ理論を用いると、なぜメニエール病がストレスと関連があるのか、めまい発作や低音部の難聴、聴力障害の進行、眼振の向きの変化がどうして表れるのか? また、付随して起こる、肩こりや首こり、手足のしもやけ、過敏性腸症候群、緊張性頭痛、緊張による脇汗や手汗など、すべての説明がつくのです」(石井先生)