“日本一美しい廃線跡”、旧国鉄倉吉線廃線跡の魅力とその知られざる歴史
■ 台湾から結婚式の前撮り写真の撮影に来るカップルも 線路の上を歩いていくと、ほどなく目の前に竹林が現れる。丈の高い竹林の中に1本の線路が通っていて、竹の一部がレールとレールの間に繁茂している。 この風景がSNSで大変な人気になり、インバウンドの観光客も増えた。最近では台湾から訪れ、結婚式の前撮り写真を撮影するカップルもいるという。取材日は小雨が降っていたが、かえって幽玄な雰囲気に包まれ、竹林に囲まれて方向感覚を失うような錯覚を覚えた。 そのまま歩いて行くと、左側に横たわった竹が見える。これは教育旅行で訪れた学生が体験学習として竹からベンチやテーブルを作ったもの。 竹は自生力が強く1カ月で数cm伸びるので、定期的な間引き作業を要するが、この地に鉄道が走っていたことを知らない世代にその体験作業を通じてその歴史を肌で感じてもらえる。さらに、来訪者がひと休みできるようにした。 竹は“竹灯り”としても再利用され、観光振興にも一役買っており、「今、あるものを生かす」という地元の観光協会ならではの取り組みに感心した。
道中、驚いたのはカラスザンショウの木だ。2本の太い幹の下部が線路を跨いでいて、その下をくぐるのだが、野太い根を伸ばして聳える姿は力強い。廃線後に生えた樹齢40年以下の樹木でその生命力には圧倒される。 ■ 倉吉線唯一の山守トンネルに入れるイベントは大人気 さらに先を進むと、倉吉線唯一のトンネル・山守トンネルが見えてくる。トンネル手前の擁壁が切り通しの急な傾斜を感じさせる。 1958(昭和33)年の延伸で完成したコンクリート製のトンネルは入口が経年で苔むしている。長さは107mと短く、中でカーブしている。グレーの“蓋”のような鋼製シャッターで頑丈に閉ざされ、普段は内部に入ることはできない。 しかし、倉吉観光MICE協会主催の「ウォーキングオープンデー」(原則4~11月の間、月1回程度開催、各回定員50名)などのイベントや団体ウォーキングツアー申し込みの時のみ、“蓋”に設けたドアの鍵が開き、トンネル内に入ることができる。 このイベントは大変人気があり、年内開催分は満席とのことだ。今回の取材で特別に中に入らせていただいた。