<高校野球>「なつぞら」モデル校で注目 農業後継者が大半占める帯広農 21世紀枠候補
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から北海道・帯広農を紹介する。【三沢邦彦】 【熱闘センバツ写真特集】 北海道十勝地域の中心部、帯広市の基幹産業は農業だ。市内にある帯広農は110ヘクタールの広大な敷地を抱え、生徒は50ヘクタールの畑でイモや小麦などを生産する他、畜産や食品製造などを学ぶ。道内では雪の少ない地域だが、それでもグラウンドは一面の雪化粧。選手は屋内練習場でバットを振り、汗を流す。 野球部員36人中20人が農業後継者だ。前田康晴監督(43)は「うちはコテコテの農業高校。地域に貢献できる担い手を育てている」。選択する学科によっては畑で作物の管理や搾乳、馬の世話といった時間外実習がある。野球部員も例外ではなく、全体練習は週末に限られる。エース右腕の井村塁主将(2年)は「全員がそろわない分、一人一人の意識が大切。平日の自主練習の成果を土日の全体練習で確認している」と説明する。 チームは2019年の秋季大会で大きな結果を出した。十勝地区大会全3試合をコールド勝ちすると、その勢いは北海道大会でも衰えず、準々決勝まで公式戦6試合連続の2桁安打を記録。1926年の創部以来初の秋の道内4強を果たした。 公立校として唯一4強入りした原動力は夏の秋田遠征にある。18年夏の甲子園で準優勝した金足農と練習試合を行って1敗1分け。井村主将は「試合前からの迫力が違った。相手を圧倒するような雰囲気作りが必要だと感じた」と振り返る。同じ農業校の強豪から刺激を受け、秋の躍進につなげた。 19年12月初旬。チームはグラウンドの雪を整え、ノックや連係プレーによる守備力強化やバント練習に取り組んだ。昨秋は強打を前面に打ち出したが、「堅守とバントでコツコツと点を取るのが本来の姿」(前田監督)と地道な練習を重ねる。 学校は19年、NHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」のモデル校として全国から注目を浴びた。今年は創立100周年の節目を迎え、1982年夏以来2度目となる甲子園出場に向け、長い冬に力を蓄えている。