【ホンダE-クラッチ開発秘話】苦節10年、出ない可能性もあったが、アシモの技術で市販化を実現!
「コスト、重量、大きさを半分」という無理難題が!
しかし、社内からは反対の声も多かった。現在、DCTとマニュアルが併売されるモデルでは、DCT仕様を選ぶユーザーが60%にまで達している。しかしE-クラッチの開発が始まった2014年当時はなかなか普及せず、販売の割合は20~25%に留まっていた。 大型モーターサイクルの事業企画を担当する坂本氏は「当時、大型バイクの購入中心層がブーマー層と言われる、現在60歳超えたお客様が多く、“五感で全身を使って楽しむスポーツ”をバイクに求める時代でした」と話す。 DCTもかなり普及に苦労し、“クラッチレバーの操作なしでスポーツが楽しめる”提案をした時点で、なかなか社内の理解が得られなかったという。 当初から試作版が存在し、初期の段階ではリヤシートに載せるほど大きく、重かった。ただ社内でも乗った人からの評判は良好だったそう。坂本氏自身も「試作車に乗せてもらった時、“これはいける”と思いました」と語る。 しかしセールスが見込めるか判断が下されず、2020年代に入ってもゴーサインが出ないまま開発が継続された。そして、ついに上層部からゴーサインの指示が。 「ただし“コストも重量もスペースも半分に”という指示がありました。今思えば“もう諦めろよ”っていう意味だったのかもしれないです」坂本氏は笑う。 市販化に向けて動き出した背景として、近年バイクを購入する中心層がジェネレーションY(1980年代~2000年代初頭に生まれた世代)にかなり置き換わってきたことがあるという。つまりイージーな操作も受け入れるライダー層が増えたということだ。また、長く開発を続け、社内で試乗会を続けるうちに応援や後押ししてくれるメンバーも 増えていった。 このタイミングを逃せば、次のチャンスはないかもしれない。しかし量産までの期間は非常に限られている……。そこで「非常に短期間で市販版の開発を進めました。せっかくバッターボックスに立ってボールが来たけど、振るのが間に合わない事態は避けたい。そこに間に合わせるのは非常に苦労でした」(小野氏)。