【ホンダE-クラッチ開発秘話】苦節10年、出ない可能性もあったが、アシモの技術で市販化を実現!
さらなる小型化や、電脳との連携で性能アップも?
こうして2023年11月、欧州のショーでE-クラッチは正式発表される運びとなった。 しかし今のシステムに近い形となったのはかなり最近という。 「たくさん社内で試乗会を行い、最終的にはヨーロッパに持ち込んだりして、味方をどんどん増やしていき、最後は押し込んでゴールしたみたいな。まさに出せる時が来たことで、開発陣には苦労や申し訳ない思いをさせたなと思います。でも諦めずに10年も世の中に日の目を見ることないままやり続けてくれました」(坂本氏) 大きさ、重さ、コスト……様々な課題を乗り越え、ようやく実現したE-クラッチ。それだけに今後さらなる搭載車種の拡大が期待される。今後の展望に関して小野氏に尋ねてみた。 「私の希望だけで言うのであれば、エンジンにもっとフィットできるようなシステムをつくりたい。今のE-クラッチは既存のエンジンに搭載する形ですけど、最初から搭載することを前提にした場合、うまくやれる部分があると考えています」 例えば、専用設計によってさらに小型化できる可能性もあるという。またIMU(慣性センサー)などの電子デバイスを多数搭載する1000ccスーパースポーツでは、電脳と協調することで、より性能を高められると話す。 なお、油圧クラッチの場合、構造が異なるので、システムの変更が必要になるようだ。 ちなみに耐久性に関してはマニュアルクラッチと同等。既にユーザーが使用している車両に関しても後付けできる可能性があるというから夢が広がる。 ――世界初技術の実現に向け、エンジニア達の執念にも似たアツい話が訊けた今回のインタビュー。既に何度も乗っている開発陣は「マニュアルクラッチの楽しさを何一つ損なっていない」と自信を見せる。E-クラッチを実際に試せる日が俄然、楽しみになってきた。
沼尾宏明