【ホンダE-クラッチ開発秘話】苦節10年、出ない可能性もあったが、アシモの技術で市販化を実現!
アシモのモーター制御技術がシステムの軽量小型化と簡素化に貢献!
それにしても「コスト、重量、スペースを半分」にすることは並大抵ではない。重量と大きさに関して、大きな転換点となったのが「ホンダロボティクスのエッセンス」だ。システム構成やアクチュエータの制御に、ホンダが培ってきたアシモに代表されるヒューマノイドロボの技術が大いに役立っている。 E-クラッチは、まずモーターがあり、リダクションギヤ、最後にエンジン側のクラッチレバーを回す構成。油圧でクラッチを制御するDCTとシステムが全く異なり、モーターでダイレクトにコントロールを行うため、制御の仕方が大きく違う。 「何かをモーターで制御する技術はロボティクスと基本的には同様。精密な位置の制御であったり、人間と接触する時に力をうまくコントロールしたりといった所がロボティクス技術の基本です。 E-クラッチにはモーターからクラッチまでに様々なフリクションがありますが、ロボティクス技術を応用することで、予測したり学習したりして上手くコントロールすることが可能になりました」(小野氏) これによってシステムの小型軽量化、簡素化を実現できたという。
社内の反対もあったが、タイ生産でコストを削減
技術面はクリアできても、コスト面のハードルは高かった。 E-クラッチの制御設計プロジェクトリーダーである竜崎氏は、クラッチを制御するモーターコントロールユニット(MCU)を主に担当。 コストを下げるため、今まであまり付き合いのないサプライヤーと協力。コントロールユニットには高度なソフトウェアを膨大に用いるが、新たなサプライヤーのため、今までの資産が生かせない。また、コントロールユニットの電子基盤を新設計する必要もあった。 「上司からも反対されるぐらいの開発スパンの中でやってきたので、かなりプレッシャーがありました」と竜崎氏。また、全くのブランニューではない既存の車両に適合させる難しさもあったという。 MCUは別体式で、タンク下の樹脂製トレーにエンジンコントロールユニット(ECU)と一緒に搭載されている。大きさは名刺より少し大型で、最も厚い部分で3cm程度という。 駆動系研究プロジェクトリーダーの伊東さんも「日程が厳しかった」と話す。上記の新しいサプライヤーのほか、生産がタイ工場だったことも要因。交渉や日程の調整に苦心し、「誰かが拾いきれない分を誰かがカバーする感じで、よく取りこぼさなかったなと思います。毎週もう無理だと言ってました」と話す。 また、これまでホンダは新機構に関しては日本発信がセオリーだったため、社内からタイ生産に対する反対意見も。ただし「タイでなければコストを下げるのは難しかった」(伊東氏)。 CBR650R/CB650Rはタイから部品を運び、日本の熊本工場で組み立てるノックダウン方式で生産。E-クラッチのユニットもタイホンダで保証したものを改めて日本で完成車確認するという。