スグレモノなフォルクスワーゲンID.7 2モーターで339psの「GTX」へ試乗 高バランスな電動GT
高速グランドツアラーとして訴求力プラス
フォルクスワーゲンは2021年に、バッテリーEVへGTXという新グレードを設定した。電動版GTIになると予想されていたが、現実はそれに匹敵する楽しさを獲得できていなかった。 【写真】高バランスな電動GT 2モーターで339psのID.7 GTX サイズが近い電動サルーンと比較 (174枚) 最近、同社は電動のGTIへ言及しており、GTXは交代する流れにあるようだ。だとしても、新しいID.7 GTXはグランドツアラーとしての訴求力を、確実に向上させている。 そもそも、ID.7は完成度が高かった。AUTOCARでは、2024年のベストサルーンに選出したほど。上質で、クルマとしてのバランスに優れている。これをベースに走りを磨いたGTXへ、今回は試乗してみたい。 ID.7 GTXの概要を確認していくと、リア側に286psの永久磁石同期モーターを搭載。フロント側に108psの非同期モーターが追加され、四輪駆動となっている。 このサルーンを走らせるのは、主にリア側。フロント側は必要時にしか働かず、休止中の効率を踏まえて、非同期ユニットを採用したという。 システム総合での最高出力は339ps。テスラ・モデル3 パフォーマンスは466psだから、目立って速いわけではない。 だがID.7 GTXの特長は、大パワーにはない。プログレッシブ・ステアリングは改良を受け、フィーリングを改善。ダイナミックシャシー・コントロール(DCC)と、電子制御のリミテッドスリップ・デフも調整を受けている。 駆動用バッテリーも異なる。容量は通常のID.7 プロSと同じ86kWhだが、13モジュール構成の別ユニットで、航続距離はサルーンで595km。ステーションワゴンは、空力特性などが影響し584kmと僅かに短い。
ボディは差別化 専用シートにレッド・ステッチ
スタイリングも差別化されている。フロントバンパーは、グロスブラックのエアインテークが備わる専用デザインで、デイライトの形状も異なる。VWのロゴにはイルミネーションが内蔵され、柔らかく光る。 真一文字のテールライトも、GTX独自のデザイン。立体的に光り、点灯パターンは複数から選べる。ハニカムグリル風のガーニッシュと、ディフューザーも追加された。 アルミホイールは、20インチが標準。試乗車のように、オプションで21インチも指定できる。 車内空間は、基本的には通常のID.7と大きくは違わない。しかし高性能なGTXとして、要所要所がアップグレードしてある。 エルゴアクティブという名のフロントシートは、上質なマイクロファイバーで仕立てられたGTX専用。背もたれにはレッドのアクセントが施され、ロゴもあしらわれる。ステアリングホイールなども、レッドのステッチで飾られる。 小さめのメーター用モニターは共通。ヘッドアップ・ディスプレイに、主な情報が投影される。アップル・カープレイとアンドロイド・オートとの連携が深まり、ナビの情報も投影可能になった点は特筆すべきだろう。 ダッシュボード中央には、15.0インチのインフォテインメント用タッチモニター。多くの車載機能のインターフェイスになっているが、レイアウトはわかりやすく、メニューも操作しやすい。 長距離走行を想定するだけあって、車内は快適。適度な高級感があり、運転姿勢は低めで落ち着く。筆者は、SUVのそれより好きだ。