日野自動車は損失2200億円…業績苦しい商用車メーカー、求められる対応力
国内商用車2社の2025年3月期は苦しい業績になりそうだ。前期は売上高と全ての利益段階で過去最高を更新したいすゞだが、25年3月期はタイのピックアップトラック(LCV)販売台数予想で期中2度目となる下方修正を強いられた。日野自動車は24年4―9月期にエンジン認証不正関連の米国潜在債務など特別損失2300億円を引き当て計上。25年3月期は過去最大の赤字幅となる当期損失2200億円を見込む。両社とも難局を乗り切る対応力が求められている。 【一覧表】商用車メーカー2社の業績予測の詳細 ローン審査の厳格化などに伴い、いすゞがタイで販売シェア首位を握るLCVの需要が低調だ。同社は8月に25年3月期の販売台数予想を5月の期初予想から3万台減の6万台に、11月にはさらに1万1000台減の4万9000台に引き下げた。 タイ中央銀行は10月、政策金利を2・50%から2・25%に引き下げを決定。東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司執行役員は「審査の厳格化は緩む方向」とする一方、「(販売台数予想は)まだ下方修正含みだろう。需要の底打ちは25年度に持ち越すのではないか」と見通している。 24年3月期連結決算で当期損益が170億円の黒字と4期ぶりに黒字転換した日野自。期初から未定としていた25年3月期の当期損益について、10月の決算会見時に2200億円の赤字になりそうだと明らかにした。 認証関連の米当局との和解費用の見積もり額などを引き当て計上。中野靖最高財務責任者(CFO)は「一連の認証関連の大きな峠は越えた」と説明する。ただ、米当局との交渉は継続しており、豪州の集団訴訟も係争中だ。今回引き当てた額が「適切かどうかは不明」(業界関係者)との見方もある。 トランプ次期米大統領が打ち出すエネルギー政策や排ガス規制の行方も、商用車各社の商品戦略や投資判断を左右する。電気自動車(EV)に批判的だったトランプ氏を米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が支持したことで「トランプ氏のEVに対する発言がソフトになった」(杉浦東海東京インテリジェンス・ラボ執行役員)との指摘もある。 一方、自由貿易協定(FTA)非締結国への液化天然ガス(LNG)輸出の新規認可発給を一時停止するバイデン政権の措置について、トランプ氏は解除する方針を示す。これにより当面の脱炭素の有力手段としてLNGが再浮上する可能性もある。トラック各社は足元の課題に加え、将来を見据えた適切な投資判断も迫られている。