スグレモノなフォルクスワーゲンID.7 2モーターで339psの「GTX」へ試乗 高バランスな電動GT
0-100km/h加速は5.4秒 ベースとの差は限定的
確認はこのくらいにして、発進させてみよう。0-100km/h加速は5.4秒が主張され、数字通りかなり活発。モデル3 パフォーマンスには及ばないが、ドラッグレースでもしない限り、違いを実感することはないだろう。 アクセルペダルを踏むほどパワーは増大し、その発生はリニア。高負荷時でも、乱暴な感じはまったくない。レスポンスは、高速域でも鋭いままだ。 リア側の駆動用モーターが優先的に働くため、フィーリングは後輪駆動に近い。とはいえ、これはシングルモーターのID.7の方が当てはまる。実際のところ、普通に運転している限り、パワーの差も感じにくい。 ステアリングは、ダイレクトでレスポンシブ。2328kgの車重から想像する以上に、身のこなしは敏捷といえる。高速コーナーでも、落ち着きは失いにくい。 2基の駆動用モーターは、ダイナミックマネジメントと呼ばれるシステムによって、出力が調整されている。また旋回時は、フロントモーターの回生量を増やしつつ、回頭性を高めるという。 DCCは、ドライブモードによる動的特性の大きな変化を叶えているが、スポーツ・モード時でも乗り心地は良好。多くのバッテリーEVより、運転を楽しめる。真のドライバーズカーとは呼べないとしても。 もっとも、操縦性でも違いは限定的。GTXの方がシャープに反応するものの、ベースのID.7が鈍いわけではなかった。ゴルフ GTIのように別格のスポーツモデルというより、スポーティな上級グレード、といった印象が強いかもしれない。
多くのライバルより高バランスな完成度
今回はスウェーデンでの試乗だったが、実際の航続距離を計測するには時間が足りなかった。表示されていた平均電費の限り、現実的に480km程度は走れそうだが。 英国価格は、6万1980ポンド(約1177万円)から。お安いとはいえないが、見合うだけの装備は備わる。DCCにアダプティブ・クルーズコントロール、ハーマン・カードン社製オーディオ、アンビエントライト、ヘッドアップ・ディスプレイなどが標準だ。 エネルギー効率に優れる、ヒートポンプ式エアコンはオプション。巨大で調光式の、パノラミック・サンルーフも。 速く洗練され、多くのライバルより高バランスな完成度にある電動サルーン、ID.7 GTX。優秀なモデルを土台に、力強さと運転の楽しさ、快適性を巧みに引き上げることに成功している。 ただし、ベースとなったID.7も魅力的な存在にある。シングルモーターでも運転は楽しく、不足なく速く、英国価格は1万ポンド(約190万円)近くお手頃。航続距離も長い。 とはいえ、高速での長距離移動を得意とする電動サルーンをお考えで、活発なフォルクスワーゲンがお好みなら、ID.7 GTXを気に入るに違いない。 ◯:ダイナミックで運転が楽しい 控え目ながら、しっかり差別化されたスタイリング △:GTIに並ぶようなドライバーズカーとはいえない 馬力と引き換えの、短めの航続距離 お高めの価格
フォルクスワーゲンID.7 GTX(欧州仕様)のスペック
英国価格:6万2600ポンド(約1189万円) 全長:4961mm 全幅:1862mm 全高:1538mm 最高速度:180km/h 0-100km/h加速:5.4秒 航続距離:595km 電費:6.1km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2382kg パワートレイン:永久磁石同期モーター(リア)+非同期モーター(フロント) 駆動用バッテリー:86kWh 急速充電能力:200kW 最高出力:339ps 最大トルク:55.4kg-m ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
ジェームス・アトウッド(執筆) 中嶋健治(翻訳)