東京五輪マラソン「札幌コース」は大通公園発着の周回コースでいいのか?
東京五輪の男女マラソンは札幌開催が決まり、次はコースについての議論に入った。本番まで9カ月を切り、ゼロからコースをつくる時間はない。大会組織委員会、札幌市、北海道は18日に2回目の実務者会議を行い、三者は札幌市中心部の「大通公園」を発着点とすることで合意。コースについては、大会組織委員会が8月に開催されている北海道マラソンのコースを基本に、日陰の少ない往復13kmの直線道路を外し、市中心部を2周する案を提示した。一方で、ワールドアスレチックス(国際陸上競技連盟から改称)は6~8周程度の周回案を示しているという。 大会組織委員会は12月3日に始まる国際オリンピック委員会(IOC)理事会までにコースや日程を固めることを目指している。しかし、このままでいいのだろうか。そこで様々な角度から東京五輪マラソンの「札幌コース」がどうあるべきか考えてみたい。 近年のオリンピックや世界陸上のマラソンは、周回コースで実施されている。今夏のドーハ世界陸上は1周7kmを6周した。3年前のリオ五輪は5km進んだ後に1周10km(片道5kmの折り返し)を3周して約7km走ってフィニッシュするコースだった。 世界大会で周回コースが主流になりつつある理由は主にふたつある。ひとつはスタッフ(警備員、ボランティアなど)の配置を縮小できるため、経費を抑えることができる。 もうひとつは沿道につめかける観衆が複数回にわたって選手たちを観戦できることだ。開催地によっては、沿道の観衆が少ないこともあるが、周回コースだとそれもカバーできる。ただし、日本はマラソン人気が高く、コースが広範囲でも沿道がファンで埋まるとの期待もあり、東京では新国立競技場を発着点とし、都心の名所を巡る「巡回型」を予定していた。 なお北海道マラソンのコースはスタート地点の大通公園を南下して、4.5kmくらいまでに標高差で約25m上る。その後は北上するかたちで大通公園に戻り、この間はダウンヒルコースになる。11km以降は郊外の北西に向かうが、フラットな直線が10km以上続く新川通の部分は東京五輪コースから除外される可能性が高い。大通公園近くの札幌中心部のみで行われることになれば、起伏や曲がり角が多いコースになるだろう。 北海道・鈴木直道知事は、「札幌の街並みを世界の皆さまにご覧いただく、大きな魅力発信の機会になる」と札幌開催に大きな期待を寄せている。ランナー目線でいうと、マラソンを楽しみたい市民ランナーは、コース上の眺めもレースの魅力となるが、真剣勝負のランナーに景色を楽しむ余裕はない。