手口を全暴露!これが腐敗で焼け太りする「トランプ流関税悪用術」だ
ロビイストを嫌った「トランプ1.0」
2016年の選挙では、トランプは「沼を干上がらせろ」(Drain the Swamp)と言った。どうやら「蚊(か)を退治するには蚊が育つ大元である沼地そのものをなくさなければならない」という含意で、20世紀はじめに「貧富の格差をなくすには資本主義そのものを解体せよ」というように社会主義運動家が使っていた文句らしい。トランプとしては、ワシントンという沼地を正直で説明責任を果たす街に変えるといった意味なのだろう。だが実際には、生き血をすする蚊の群れにまぎれて、自身も「クレプトクラート」(盗賊政治家)になろうとしているようにみえる。 本当は、「トランプ1.0」時代から、トランプ政権の指導者らは「沼を泳いでいた」、すなわち、大いに金儲けに邁進していたのである。その実態について説明してみよう(詳しい実態については、「トランプが築いた沼」というNYTの長文記事が参考になる)。 今年7月に「関税免除の政治経済学」という興味深い論文が公表された。それによると、2018年7月からトランプ大統領の米通商代表部(USTR)は、拡大し続ける中国からの輸入品に一方的に関税をかけ始めた。それは、2019年9月までに年間5500億ドル相当の商品輸入のほぼすべてを平均約20%の関税率でカバーするまでに成長し、理論上は年間1100億ドルという過去最高の関税収入が得られるようになった。さらに、中国からの輸入品に新たな関税を課すと同時に、USTRは、輸入業者が個々の製品について関税の免除を申請できる「デノボ・プロセス」(de novo process)も確立した。 この関税免除のプロセスは、「米国の利益への害を防ぐため」と公言された目的で開始された。(1)その製品に関税をかけるとアメリカの利益に大きな損害が生じる、(2)代替製品が米国内でも中国以外の第三国からも入手できない、(3)その製品が中国にとって戦略的に重要でないとみなされる場合――免除が認められる可能性が高くなる。 とはいえ、その判断基準は曖昧だった。ゆえに、きわめて恣意的な免税措置が実際にとられた。論文は、「最終的に承認された1022件の提案は、最終的に却下された5993件の申請と比較して、選挙献金が多く、ロビイ活動への支出が多い企業によるものである」と指摘している。さらに、「本来は独立した立場であるはずの政府の裁決プロセスが、少なくとも部分的には支持者に報酬を与えるために利用されているだけでなく、同じプロセスが反対派の支持者を罰するためにも利用されていることがわかる」とも書いている。 いま騒がれている関税強化にしても、前回と同じく「デノボ・プロセス」が認められれば、ロビイストが金儲けをする絶好のチャンスを与えることになる。