XにもYouTubeにもない「底知れない拡散力」がある…米国政府が本気で「TikTok規制」に乗り出す本当の理由
■筆者が考える「最も現実的な解決策」とは また、ルーマニア大統領選のサイトが選挙期間中にロシアから国家規模といえる8万5000件以上のサイバー攻撃を受けたことが発覚。ロシア政府は関与を否定しているが、ルーマニアの憲法裁判所は12月6日、第1回投票を無効として選挙全体のやり直しを命じた。 欧州議会はTikTokに対して、外国勢力の介入や組織的な不正操作を防ぐための適切な対策があったかを調査するという。 日本でも、今年の都知事選や兵庫県知事選はSNSの影響が大きいといわれているので、欧州委員会の調査結果は注目を集めそうだ。SNSによって、選挙という民主主義の基盤が揺らいでいる。 世論操作は、米国のTikTok「禁止法」でもリスクの一つにあげている。今回のルーマニア大統領選は、TikTokを使った世論操作の有効性と危険性を示したといってよい。 果たして、米国最高裁とトランプ氏はどのように判断するか。私は以下のように予想する。 まず最も起こり得ないのは、TikTokに禁止措置が発効され、利用できなくなること。1億7000万人以上の利用者に与える影響は大きく、クリエイターを中心に猛反発が起こることは必至だ。 だからといって、現状維持でTikTokのリスクに手を打たないことも許されない。議会と控訴裁判所が想定したリスクを全否定しない限り、何かしらの対策は必要となる。 最も現実的な解決策は、バイトダンスが米国企業による買収を受け入れることだ。買収する側は、米国のユーザーデータをすでに保管しているオラクルが有力だろう。 バイトダンスは当然、アルゴリズムをはじめとするテクノロジーの流出を避けたがる。中国政府も何かと理由をつけて手放さないだろう。問題がこじれたら、現実にTikTokが使えない状況を迎えるかもしれない。トランプ氏が得意のディールで見事に解決してみせるのか、目が離せない。 ---------- 田中 道昭(たなか・みちあき) 立教大学ビジネススクール教授、戦略コンサルタント 専門は企業・産業・技術・金融・経済・国際関係等の戦略分析。日米欧の金融機関にも長年勤務。主な著作に『GAFA×BATH』『2025年のデジタル資本主義』など。シカゴ大学MBA。テレビ東京WBSコメンテーター。テレビ朝日ワイドスクランブル月曜レギュラーコメンテーター。公正取引委員会独禁法懇話会メンバーなども兼務している。 ----------
立教大学ビジネススクール教授、戦略コンサルタント 田中 道昭 構成=伊田欣司