まるでハイテク武装の彗星みたい!? 真似できないロータス印のSUV型EVとは【東京クルマ日記】
ロータス75年の歴史で、最初のEVにしてSUVが「エレトレ」ですよ。今回乗った最上位機種「エレトレR」は、英国ライトウェイトスポーツで鳴らした古豪メーカーのクルマとして最も重い2.6トン超え。搭載されたバッテリーパック(665kg)だけで初代「エリーゼ」1台分とほぼ同じ重さなんだから、180度正反対の方向転換と言っていい。 【写真】デュアルモーターで905馬力を弾き出す最上位機種「エレトレR」、次世代向けの専用車載OSの搭載やインテリアの高級感などスポーツカー専業メーカーの手には負えない勝ち筋が満載。 そんな「エレトレ」は今年イチ楽しみにしていたクルマなんだ。理由は、日本で購入できるEVの中で最もハイテク機能が満載だから。34個ものセンサーによるマッピング情報は自動運転車両のために開発されたNVIDIA製チップによって統合されている。日本では使用できないけど、ドライバーが同乗しない自律走行が可能で自動運転レベル4(ドライバーの監視が必要ない自動運転)を実装しているとのこと。 これらの情報を有機ELタッチパネルに映し出す高度なグラフィックは、最新の「Unreal Engine5」によるもの。最先端のゲームグラフィックはほぼこれでつくられているといって過言でないほど、現代を代表するグラフィックエンジンなのね。 既に次世代向けの専用車載OSも搭載していて、これらの技術原資は親会社の「吉利汽車」による潤沢な開発資金を感じさせるものばかり。格上げされたインテリアの高級感にもひと役買っていて、正直、スポーツカー専業メーカーの手には負えない勝ち筋が満載なんですよ。 じゃあ「ロータスは名ばかりなのか?」と訊かれたら、「こんなロータスに乗ったことはない」と返したいね(笑)。爆速だし、走りはめちゃくちゃよい。この高性能モデル「エレトレ R」は、デュアルモーターで905馬力を弾き出す。アクセルを踏めばほとんど無音のまま、槍で虚空を突き刺すような加速を見せるのね。それでいて高速道路はグランツアラー顔負けの、エアサスの上品な足まわりで長距離移動を快適にこなす。ドライブモードは多彩で、変えるたびに車高を上げ下げし、それぞれ減衰力を変えてみせる。 サーキットの狼世代の諸兄なら「それはロータスじゃないな」と思うでしょ? いやいや、モノは試しで峠に行ってみよう。ハンドリングは正確かつフラットで、コーナリングは地面に張り付こうとするようにバシっと安定する。横Gの許容度が異様に高くて、コーナーを脱出する時に思わず声が出てしまうほど素晴らしい(笑)。ブレーキもしっかり効くし、オプションのカーボンブレーキだって積極的に薦めたい。こんな走りは、ぽっと出のEVメーカーができる走りじゃない。 走行中はレーザー光を使用したセンサーであるLiDAR(ライダー)が起動し、半径200m以内の歩行者や自転車、他の乗用車やトラックの大きさ、果ては道端のパイロンまで正確に3D検知する。豪雨の日や夜道を走っても、死角の可視化が完璧だったので、自動運転はすぐそこだな、と実感した。ロータスの経営権獲得から始まって、自前でない技術は買うなり協業するなり、最短ルートで実現する「吉利汽車」の貪欲さとスピード感が「エレトレ」の真骨頂。まだまだ進化するし、自動車業界における彗星みたいだと思ったな。