「ポストSDGs」の観光まちづくりはニセコ町に学べ
記事のポイント①ニセコ町は、SDGs未来都市として住民政策と観光対応を関連付ける②小説家・有島武郎の「相互扶助」がニセコ町のまちづくりの基盤だ③ポストSDGsでは、住民の協力の下で、地域資源の最大活用が重要だ
SDGs未来都市・北海道ニセコ町は、持続可能なまちづくりと観光の受け入れを両立させる包括的な戦略を展開する。この戦略は、住民向けの取り組みとインバウンド両面からアプローチし、地域全体の持続可能性を高めることを目指している。(千葉商科大学客員教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)
■スキーリゾートのニセコ町
ニセコ町は北海道の札幌市や新千歳空港から約100キロ西に位置する人口5065人(住民基本台帳人口、2024年6月30日)の町だ。 国際的スキーリゾート地だが、「通年観光リゾート地」として夏のアウトドアスポーツなども充実しており、日本国内のみならず国外からも多くの人が訪れている。2023年度の観光入り込み人数は約160万人(冬85万人、夏75万人)だ(ニセコ町調べ)。 「スキーとニセコ連峰」が「北海道遺産」に選定されている。2018年にSDGs未来都市・第一弾に選定された。 SDGsの推進に関連し、ニセコ町では、長年の課題であった住宅不足と産業を支える人手不足を解消するために、新たな住宅地の開発を進めている。 「ニセコミライ」と名付けられた「SDGs NISEKO生活・モデル地区」プロジェクトである(2022年度から造成工事が開始)。これは、市街地に隣接した9ha規模で、最大で450人が暮らせる町を建設するものである。新しい住宅地は、省エネルギー性能の高い住宅や再生可能エネルギーの導入を推進し、住民にとって快適な住環境を提供することを目指している。 老若男女が共に暮らし、多様性と対話が生まれる住環境を提供することを重視している。例えば、高齢者向けのバリアフリー設計や子育て世代に配慮した公園や保育施設の設置などが計画されている。 コミュニティガーデンや地元産品の消費を促進する取り組みを展開し、地域内経済循環を強化している。
環境保全とエネルギー効率化も重要な取り組みである。ニセコ町は、地域のエネルギー自給率を高める努力をし、リサイクルプログラムや廃棄物削減を推進し、循環型社会を目指している。これにより、地域住民の生活環境を改善し、持続可能な地域社会の構築を進めている。 加えて、教育と啓発活動も重要な要素である。ニセコ町は、持続可能な生活についてのワークショップやセミナーを開催し、地域住民の環境意識を向上させている。学校教育において、SDGsや環境問題についてのカリキュラムを導入し、次世代に向けた持続可能な社会の意識を育んでいる。