利益と社会・環境的影響を両立する「インパクト」が存在感を増す 行政が期待する理由は
社会課題を解決して社会にプラスの変化を与える「社会的インパクト」を生み出すための「インパクト投資」が注目されている。 インパクト投資とは、経済的リターンと並行して、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを同時に生み出すことを意図する投資のこと。従来は経済的リターンが重視されていたが、インパクト投資は社会的インパクトも同時に評価するのが特徴だ。 国内ではインパクト投資の対象に、健康や医療、気候変動、教育や子育て、都市開発といった分野が選ばれている。 近年注目される「スタートアップ」も、インパクトとの関連を深めてきた。2022年には「インパクトスタートアップ協会」が設立され、投資資金の呼び込みや行政・大企業との連携強化に取り組んでいる。 社会的インパクトの創出に取り組むスタートアップには例えば、炭酸カルシウム(石灰石)などから環境に配慮したプラスチックや紙の代替素材「LIMEX(ライメックス)」を開発する株式会社TBMや、国内外の知的障害のあるアーティストの作品を管理する株式会社ヘラルボニーが挙げられる。
■リンゴ材料のヴィーガンレザー、“おがくず”からカブトムシ育成の企業も
2024年5月14日には東京都内で、社会的インパクトに関するイベント「インパクトフォーラム」が開催された。 内閣官房副長官の村井英樹氏や、現福岡市長でありスタートアップ都市推進協議会会長を務める高島宗一郎氏といった行政や金融機関関係者に加え、インパクトスタートアップ協会代表理事の米良はるか氏ら国内外約50人のインパクトに関する第一人者が登壇している。 主催は金融庁などが事務局を務めるインパクトコンソーシアムだ。
内閣府大臣政務官の神田潤一氏は、氏の地元である青森で立ち上げられたファンドが、リンゴから出る廃棄物からヴィーガンレザーを開発する会社や、キノコを栽培する際に廃棄されるおがくずを使ってカブトムシを育成する会社に投資している例を紹介。 「生産拠点に近い地域はインパクトに対する強みがある。しかしビジョンは明確でも事業戦略が具体化できない、素晴らしい技術はあるけれども財務戦略が明確でないなど、地域におけるインパクトスタートアップには様々な課題がある。インパクトコンソーシアムのようなエコシステムと協働して実践していくことが重要だ」と、地域発インパクトスタートアップやコンソーシアムへの期待を語った。